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2004年06月のセビリア発信・つれづれ草
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●2004年06月27日(日)

来週からミゲルと仕事をする。
やっとだ。
ブルーノート出演の頃に一緒に仕事をしたいと言っていて、実現しなくてもう三年?四年?
ブラジル人の彼は、ワールドミュージック系の音楽を手がける。
フラメンコも勿論素晴らしい。某有名舞踊団で活躍中だ。

日本ではすぐにフラメンコ・プーロがどうしたこうしたという狭い範疇で論じたがるけれど
フラメンコ・プーロの人はスペインではほとんどなんでもできるのが常だ。

子供の時にもう大天才としてフラメンコは全部逆立ちしていてもできるようになっている人がいっぱいいる。
そうすると15歳を待つ前に色んな音楽を聴くし、色々なアーティストと出会う。
当然だ。小学生の時の芸のまま退屈しないで一生終わるのは苦しい。
特に最近の若手はそうだ。
それだからと言って、元のフラメンコが悪くなるわけではない。
英語習ったら日本語ができなくなるわけではないのだから。
より日本語の理解が深くなることはあっても。

ところで、昨日の続きだ。
ホアン発掘までに実にさまざまな踊り手と知り合えた。
どこにこんなに居たかというくらいに居た。
今回の役には当てはまらなくても、違う物では十分違う展開ができると思う人が随分いたし、
単にスケジュールが合わなくて惜しくも共演できない人も沢山いた。
みんな手帳に残っているから今後の展開は楽しい。

私の個人的な好みとしては、今回の歌い手のミゲル・ロセンドの低音の利いた太い声より
細めの哀愁の声の方が好きなのだ。あの「鏡の向こうに」という作品は歌い手とパーカッションを違う
個性の人に変えただけで随分と別の作品になるだろう。
今度はスペイン国内でこれを試してみたいと思っている。

ともあれ、もう夏休みに入ってしまう。
学校は6月の二週目から夏期休暇だ。企業と個人はこれからさみだれ式に
7月、8月、9月と長期休暇に入る。

そうだ!!忘れていた。
日本滞在中にカデイス県の文化庁から生徒をコンクールに出してくれという郵便が届いていた。
9/11が決勝だそうで9/3までにビデオを出さないといけないらしい。団体群舞での参加可。
4人以上30人以下で出ていいらしい。確かスペイン研修旅行で来ると言っていなかったでしたか?
夜の11:00から決勝なので、出たらいいと思う。
もしもこの晩にビエナルでパコ・デ・ルシアだったら、ちょっと辛いかな。
ご検討下さい。ビデオはホームビデオで質が悪くても可。10分以内。だそうです。
もう三年以上、この郵便が私宛に来る。出てはどう?

●2004年06月26日(土)

つれづれを書いた最後の話を読み返して
ああ、そうか、と時間がつながる。

空港でさんざん聞いた秘話のあれこれ。

口のかなり堅いホアンでもこんなに何でも喋る。
旅の気安さと退屈で、みんなどんどん色んな人の失敗談や
最近目撃したまずい話なんかをする。
ロンドンで呆れるほど聞いてしまった。

踊り手の誰それはジプシーパッションに見せかけたくて
汚いブエルタをする。あんまり力が入りすぎていて転ぶんだよ、
なんて言う。
まさかぁ、と言えばペドロは本当だよ、転ぶんだよ、と力説する。
あなた、その転ぶヤツ私に勧めなかった?と喉まで出かかった。
まったく仲人口は当てにならないとはこの事だ。

ホアンに落ち着くまでにありとあらゆる踊り手が候補に上がり、
オーデイションをして、とても大変だった。
みんな推薦する人がいて、推薦する人は超一流の人ばかりだから
そんなに悪くないだろうという気もした。
でも会うなり、困ったなぁ、というのもいっぱいあった。

年が18才なんていうのもいた。
28ならそんなに悪くはないけど18だけはダメだ。

でも、僕、年よりずっと渋く見えるんだよって言う。
笑ってしまう。
肩幅狭くてなよなよしていた....
思い出の男性になるにはインパクトが薄い。

マティルデ・コラールのスクール出身の男性はみんなダメだ。
よくもこれだけダメなのが集まるというくらいにダメな男ばっかりだ。
音感悪く、リズム感悪く、とてもプロの領域ではない。
やっぱりまともなバイラオールだったらああいう、女踊りの総元締めみたいな人のところには行かない。そこからしておかしいのだ。

音楽はペドロ・シェラなの、と言う時に、えーーー!!??やらせて欲しいなぁ、その役って言うのが当然なのに
誰?それ?
こういう返事が返って来たら、これはもう素人としか言えない。

私の大好きなギタリストのミゲルとは四年越しの付き合いなのに
今まで一度も仕事ができていない。
スケジュールが合わないのだ。
彼はワールド・ミュージック系もとても素晴らしい。
一緒に仕事ができないのに私が困った時に人探しばかりしてくれる。
ホアンを強く押してくれたのは彼だ。
なのに始めはこう言ったのだ。
「だめよぉ、もう今夜ほとんど決めて来ちゃって明日契約するんだもの。」
全然引き下がらない彼は、こいつは凄いハンサムだからって言う。

「うーーん、ハンサムだってみんな言うのよねぇ....でも禿げてたりするんじやない?....禿げてないって?....お腹出てるでしょう?...
出てない?.....じゃ、チビだ。ブリエいっぱいしないといけないんだ、きっと」

そのどれでもなくて、その上踊りはもーーーのすごく上手いって太鼓判押す。
「それにさ、上体の使い方とか君と似てるんだよ。なんていうか
アイレが良く君と似てるよ。今度の役には彼しかいないよ、本当だってば。デュオやると雰囲気がぴったりだと思うなぁ」

そのうちに本人から電話がかかってしまうし、
「禿げてない?背は何センチ?お腹出てる?」次々失礼な質問をしてしまう私はもう、時間がぎりぎりだったのだ。

会うなり、今度は「本当に踊り上手い?自分で言ったら信じる」
これって呆れますよねぇ....
いきなり車に乗ってもらって自宅までラチして、挙句に踊らせてしまったのだから
こんな目にはホアンほどの人は遭ったことがなかったと思う。
彼の芸歴が来たのはこの全部が終わった後だったのだから。

今、ビデオを再生してみると本当にブラソがぴったり合っていて驚くのだ。二人で合わせようとして練習など一度もしていないのに。(誤解がないように一言。ホアンとは言葉を交わさないでいつもテレパシーで振り進んでしまうのだ。ちょっと見た時のお互いの目の色で分かってしまうところがある。不思議なパートナーだ。)

昨日、ペドロに見せたら同じ事を言っていた。
これ、借りていいでしょう?うちの女房が見たがってうるさくてさ。楽しみにしているんだよ、って言う。
この人も凄い。そう言った時にはもうスタジオの機械をフル回転させてコピーを作ってしまった後なのだから。

とにかく私達三人でいると言葉が最小ですぐに何でも出来てしまう。
日本に行く前に既にペドロが感に堪えないと言う感じで
毎日のリハーサルは僕は楽しいんだ凄く。なんか息がぴったり合ってさ。と言ってくれていた。私もとても楽しかった。
三人でとても気が合うのだ。言葉が飛び交わないのがその証拠だ。
しばらくこういう素敵な関係で作品に次々取りかかれるといいな、と思っている。ペドロとはワールド系の音楽で、うんとコンテンポラリーなのもやる予定でいる。
本当に楽しみだ。

http://www.flamencoole.com/

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