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2005年08月のセビリア発信・つれづれ草
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●2005年08月14日(日)

プロの目

昨日は、色々と研究しているうちに
珍しく新体操娘がクラシックに興味を持つので
プリセツカヤとウラノワを比較してみせてやった。

娘が、あっという間にウラノワの素晴らしく一体化した
甲とトウの関係に言及したので嬉しかった。
11歳の娘とプロの会話が出来るのは親の余禄だ。

あれっ?と思ったけれどなんとなく見過ごしていたプリセツカヤの古いフィルムに、意外と甲が出ていないのも初めの一秒で娘が目ざとく見出だして不思議がる。
今度よく観察してみよう。
こんな事ってあるかしらん。
あの素晴らしく超人的なプリセツカヤの甲が半端だなんて。

それにしてもプリセツカヤの演技の大胆で華やかな事と言ったらない。世界で一番気丈な女性にならないとこういう演技は出来るものではない。
バレエダンサーの鉄のような強靭な人格は
他の舞踊の比ではないけれど、その中の女王だな、と又思う。

プリセツカヤの跳躍に娘が驚嘆する。
意外と大きな腰とか太いももを、横から加わった水泳娘が次々揶揄するので 本当だ、と思いつつも
うるさい、あっち行け!と追い払う。

最近、感じることに、タマーラの眼識が著しく高まっていて
ダンサーの欠点と長所を一秒で言い当てる。

私が気付いていて何となく本人の名声とか労わりから気付かない振りをしている所に
ぐさりとメスを入れるので、とても驚く。

娘の目の確かさもそうだけれど、大人というのはこのように自分の目を意識的に曇らせるものなのだな、とそのいい加減さに呆れる思いだ。
この道のプロで、目は確かなのに頭がなぜか相手に対して防御に入る。
不思議なことだ。

さんざん古いフィルムを見てから
オペラ座の若いダンサー達を見る。
すばらしく粒がそろっていて手足が長い。
技術も素晴らしい。バレエも本当に完璧の上を行くほどに
発展していると思う。
タイムマシンの若いマーゴもプリセツカヤも
ここに混じると負けるかも知れない。

でもやっぱりその圧倒的な存在感で、やっぱり動かないと思うのは私の正しい判断だろうか。
それともノスタルジーだろうか。

●2005年08月13日(土)

チョコラーテ

真っ黒のジプシーの歌い手、チョコラーテが先ごろ亡くなった。
深遠なるシギリージャが18番だった。

私はこの人のフィエスタには何度も何度も一緒になっている。

突然、凶暴なくらいに怒り出すこともあって、凄く危険と言われていた人だけれど、私の知る彼はナイフなどの飛び道具も出したことがないし、機嫌よく飲みかつ歌い....あ!違った!

大劇場の聴衆の面前で、伴奏ギタリストを面罵しているのを見たっけ。
おお、これかぁ、この人のあの噂は...と思ったものだ。
伴奏がしにくいと評判なのは、この人とカマロンだった。

シギリージャという曲は、歌も踊りも、大成功のうちに終わるのが難しい至難の曲だ。

タブラオ時代にこの曲をやめさせてもらえずに通算
600回くらい踊らされた。あれから一度も舞台で踊っていない。
昨年マルテイネーテを15年ぶりにやっと呪縛から解かれて
踊っただけだ。....するとやっぱり凄くこの系統が好きだとあらためて思った。

シギリージャ、マルテイネーテは素晴らしい。
これぞカンテ・ホンドの最たるものだ。
苦悩に満ちて満ちている。

シギリージャは苦しみだ。
慟哭だ。魂の黒い叫びだ。
これに惹かれて、これに終わるのだろう

●2005年08月11日(木)

吉田先生とのお話の続き

フラメンコがどんどんモダンになって行き、
もう元のと関係ないくらいに一秒のゆとりもなく
振り付けで生き埋めにしていく、とお話すると

「バレエでも同じ傾向ですよ」と吉田先生がおっしゃった。
「そうでしたか!!やっぱり...」

クラシックバレエで次々革命が起きて
新メソドもどんどん出てきて、もう昔のような純然たるクラシックだけでは生きていけないのだそうだ。

ある意味、ロシアのレニングラード、今のサンペテルスブルグだっけ?も古くなりつつあるんだそうです。
それでもワガノワはワガノワで世界最高水準ですけどね、と力説された。

ロイヤルバレエでも、コンテンポラリーのプログラムが沢山あり、バレエダンサーは今月ずっとジークフリートやってたと思うと突然、斬新な振り付けで伊達男にならないといけなくて気持ちも体の切り替えもとても大変、と確か言っていた。

私は古風な本物のフラメンコをやるとやっぱり心がしっくりと寄り添い、魔法の電流に打たれる。

モダンなのは、早口言葉の練習のようにぺらぺらとコンパスを操りながら、別の難しさと別の快感がある。
こっちをやる時は、舞踊家というより武道家という感じがしてくる。

心情的にはクラシックなフラメンコが好きだし、得意だ。
得意なのばかりしていると運動にならないから、違うものを運動としてやっている。

見る方になると、今のモダンなフラメンコはめちゃくちゃつまらなくて感動に至らない。

じいーーーーーっと動かないで凄い存在感で圧倒した昔のアーテイスト達のあの魔法は、
やっぱりあの時代と共に死んでしまって
今のサラ・バラスやロサリオ・トレドの踊りには全然無い。

いくら感動しようと心に決めて行っても 感動できない。

どんな時点でも世界の最先端を行きながら
絶対にどの断面を取っても、永遠のフラメンコの霊感に満ち満ちているのは、やっぱりパコ・デ・ルシアだけだなと思う。
もう60歳だっけ?58歳?

天才の中の天才。
七歳のときに父親が言う。
パコ、もう学校が払えない。学校は辞めて欲しい。こうなったら何か一つはちゃんとできる人になりなさい。ギターリストとして立派におなり。

彼の学歴はここでお終いになった。

(だからよーーーーほらーーー高学歴でろくなことにならないって)

●2005年08月07日(日)

王立舞踊学校の教授陣


トリニダ・セビジャーノというスペイン出身のバレリーナが
まだ30台の若さで引退すると聞いた。

誰から聞いたかというと、この間の新体操スペイン選手権でバレンシアに飛ぶ飛行機で偶然乗り合わせたイスラエル・ガルバンから聞いたのだった。素晴らしいバレリーナで、しかもセビージャでクルソをやっているから受けなよ、という話だった。


この人の経歴が輝かしい。

世界の有名バレエ団のプリマとして大活躍。ヨーロッパとアメリカに勇名がとどろく。
−私は門外だから全然知らずに過ごしてきたけれど、スペインの特に北部出身に優秀な人材が多く出るのは聞いている。


先ごろお知り合いになれたパリの吉田先生によると、幼少の頃から真の天才少女だったという太鼓判が押されている。

この素晴らしいバレリーナは、サラゴサ地方の出身なのだけれど
セビージャで家庭を持って暮らすと決心したので、ここの王立舞踊学校に経歴書を送ったということだ。

結果、迎えてもらえなかったらしい。

経歴書ぺらっと一枚で大歓迎して入れるべきなのに、試験までしたそうだ。その上で落とした。
呆れて物が言えないと、バレエ関係者は言う。

あまりに優秀な人というのは、
それほどには優秀でない専門家たちの地位を脅かすから
失格になる。

セビージャの王立舞踊学校のバレエ科の教授陣には
私や吉田先生と懇意の人達が大勢いる。
あの人達が落としたのだな、と思うと複雑な気持ちだ。

結局、コンセルバトリオというのは、そういう所なんですよね、と吉田先生はつぶやかれた。

私の親友のバレリーナのメルセデスによると
この素晴らしいバレリーナのレッスンは、世界の有名バレエ団のリハーサルはこうなんだろうな、と思わせるスピードとスリルと重厚な技術に満ち満ちているそうだ。

こんな人がコンセルバトリオに入ってくれたら
私の娘のタマーラも、行ってもいいと思うだろうにと、本当に残念だ。

一度このバレリーナに会いに行き、セビージャで協力して何かできないかお話してみたいと思う。
微力ながら、こんな逸材はどんなにしても応援しないといけない。
そうだ、たった今電話してみよう!

http://www.flamencoole.com/

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