●2001年09月29日(土)
【硬直型偏執狂の金曜日】
昨日からついにクラシック・バレエは万策尽きて個人レッスンに突入してしまった。 フラメンコの揺りかごであるセビージャはバレエの人気がない。 一握りのプロ・バレリーナはバレエ団の契約が決まる度にクラスを抜けるので、どこのクラスに鞍替えしても、いつでも最後は私一人になってしまう。 雨が降ろうが風が吹こうが、何がなんでもクラスに出頭する皆勤賞生徒は私だけだ。私一人では学校はやって行けないので大抵クラスがなくなる。 かくしてどんなに意思が堅くても私とバレエは悲しい恋人のようにいつも仲を引き裂かれてばかりだ。 この現象はいつからかというと、スペインに留学した始めの年からずっとなのだ。 この夏には飽き飽きして、どんな事をしても一人、自分の専用教師を雇ってしまおうかと思いつめたくらいだ。 つまり月給で。 そのためにどこかで戴くギャラを全部注ぎ込んでもいいと思うくらいにイラついている。(あ〜鷺沼のバレエクラスに通いたい!てなものだ。) もう、茶番としか言いようがない。どこに行っても熱心なのは私一人になってしまう。信じられない。バレエは趣味でやりたい専門外のこの私がいつでもそこで一番熱心な生徒になってしまうなんて。つまりそのくらいにバレエの上級クラスが存続できない土地なのだ。 クラシックバレエの個人レッスンというのは、生徒も教師もかなり苦しい。 あれは直されてその場でお手本どおりの事ができるものではないから、(このエカルテは脚を耳の後ろまで、とか言われてこうですか?とは行かないなど) プロのバレリーナでも個人レッスンでは死にそうになると告白する。 一人だったら、クラスは中止、というのは常識にさえなっている。 バレエクラスのために犠牲にしていることがあまりに多いので、私はこれをやられたくない。ただの一回のクラスも中止だなんて耐えられない。この時間を捻出するためにどれくらい苦しんでスケジュール調整しているか知れないのだ。稽古の番狂わせというのを憎むこと、親の敵以上。生涯のうちのただの一回の午前中じゃないの、なんて言われたくない。 私という人間は、そのくらいの偏執狂なのだ。 けれども、こういうダレた土地では通用しない私の硬直性は、もうそれこそ人買いのようにしてですね、教師を雇うしかない。 ところが、更に不幸なことに、こういう法外な条件を出すと人は恐れる。 なんだか怖い、こんなの聞いたことない!と。じりじり...後ずさり。 昨日は朝から大雨で、晴天に慣れているセビージャ人はプロでももうこれだけでクラスを休む。案の定、出頭したのはスイス人の教師と私だけになって教師は今日は二人でコーヒーにしないといけないとのたまう。 冗談じゃないのだ。 かくしてこの場で親友のエバを電話でよびつけて個人レッスンを依頼。 やってくれないなら、私は明日から空手か少林寺拳法に通う、と脅迫。 もうこんなやくざなクラシックなんかと絶縁して武道に鞍替えしてやろうかと思ったくらいだ。この先、エバでさえもしくじったら本当にそうしようと思う。(鷺沼の向かいにファイティング・原田さんがジムやってますよね!) 朝、一番で難しくて徹底的に苦しい何かのクラスに行きたい。 自分でやるのはフラメンコだけで十分なのだ。 バレエまで自習にしたら、一日中、一年中、自閉症的自分との戦いになってしまう。 ....で、エバはレッスンではきつかった。足腰立たないというくらいにやられてしまった。個人だと、次ぎの生徒が標的になっている間に回復することができない。標的は常に自分だけだ。 お願いだからこのまませめて3年は続いて欲しいと思う。家からは最高に遠い。毎日成田空港に通う、というくらいな気がする。下の娘を連れて行く日は、成田に2回も通う感じだ。それでも通うぞ!!!さぁて、武道の入門までもう紙一重に追い詰められています。
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