●2002年09月30日(月)
新学期ーアーティストのつぶやき 子供も小学校の高学年になると親は選択を迫られて大変だ。 日本だったらほぼ間違いなく大多数は「お勉強」を選ぶのだろうけれど、 スペインだとまだほんの少しはどっちにするか悩むことが許される。 スポーツや芸術関係を断ち切らずに進ませるか 進学第一にするか、私の周りでも親は悩ましい日々を過ごしているようだ。 私の二人の娘達はセビリアで一、二を争う有名私立から 「えーーーー!?」と人がのけぞるような村の学校に今期から転校させた。 水泳をやめさせないと成績が落ちる。来年もっと落ちたら留年させると教師は繰り返し強迫した。(スペインって小学、中学でも落第があるのですよ) 小学生なのに夜の10時近くまでトレーニングがあって、宿題をやるには疲れきっているので早朝に起きてやっている姿を見るのが私はもう耐えられなかった。 勉強は待てるけれどスポーツと芸術は待てないと思ったためもある。 何になれてもなれなくても、とにかく一線を目指す年頃というのは今を置いて他にない。 本人がやりたいのだから思い切ってやればいいと思っている。 オリンピック選手になれるのはほんの一人か二人だ、失敗したらどうするのだ、と前の教師が言い張って激論になったけれど、 「なれるかなれないか、じゃないのだ。今、どう生きるかなのだ」といくら言っても相手は分らなかった。 驚くべき想像力の欠如だ。 この人は何を学んだ人なのだろうか... どうしてみんな将来、将来と言うのだろう。 今は?今は大切じゃないのか? いつか人に尊敬される日が来るように今は我慢してみんな捨てて生きろと言うのか?本当に絶対に安泰な将来が来ると頑迷に信じて? 賭博士のようだわね、まるで。 私と夫の子供だからどうせシートンやファーブルのようにはならない。 アインシュタインやマリー・キュリーの再来になれない事だけは絶対に信じられる。親譲りでさして優秀な頭脳でもないのに、みんなが出来る程度の勉強を無理やりやらせて人類のために貢献できるわけでもないのだ。 じゃ、いいじゃないの水泳に取り柄があるんだから泳がせておけば。 法学部に行ったからと言って総理大臣になれないなら意味がないって誰か言う? 経済学部に行ったら第二のドラッガーになれと誰か強制するか? しないでしょう? じゃ、オリンピックに行けないかもしれないし行けるかもしれない選手でいいじゃないの。 バレリーナだってオデットを踊れる地位を勝ち取る人は一人だけなのだ。 じゃ、コールドバレエは意味がないか?立派なものじゃないですか。 将来の何に不安を抱いて無難だと思う道を勧めるのか? 無難な道など一つもないのに。 人生で一番大切なものはことごとく無形で、どこにあるかも本当には良くわからない私達の「心」の中に輝いているばかりなのだ。 私達はそういう曖昧で、不安で、確証のつかみ難い、掛け替えのない物を胸に生を全うするばかりだというのに.....
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