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2003年09月のセビリア発信・つれづれ草
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●2003年09月29日(月)

シギリージャ

シギリージャのリズムはブレリアと同じだ。
アクセントが反対なだけだ。
だから良くみんな頭がついて行けなくなってシギリージャで外すのだ。
何をしているのか混乱してしまうわけだ。

さて、何かやろう、というと決まってマルテイネーテ、デブラ、シギリージャになる。
昔からとても好きな曲だけれど、これをかけるとどんな時でも振りがすらすら出て来る。
最近はこれだけで一時間半は足をやる。
一旦始めたら絶対に止まらない。
汗で目の前がぼうっとするまでやる。

こういう有酸素系の運動をジョギングでやれと言われたら全く根性が続かない。
ああいうのは飽きる。とても自分には向かない。
運動のために歩くというのもまるでダメだ。
同じ振りの繰り返しだけは忍耐が続かないのだ。

どんどん違う物をやらないと退屈してしまう。だから運動にならない。
絞り込もうと思ったらフラメンコだ。フラメンコさえかけておけばノンストップで張り切れる。
やる気がなくていやいや始めてもだ。シギリージャは素晴らしい!!
パコ・ハラーナのあのソロコンパスの三番から五番までを何回もかける。見たこともやった事もない足がじゃんじゃん出て来るから楽しい。また明日もこれ、やろうと思う。でも一夜明けると何もかもがまた違ってしまう。
ああ、やっぱりこの匙加減のいい加減さ、意外性と即興の醍醐味がたまらない。

フラメンコは素晴らしい。続けてきて良かったといつも思う。やめようとした事もないけれど。

●2003年09月19日(金)

私のどたばた


先週からダビ・ペーニャことドランテスがうちのスタジオでパキート(パコ・フェルナンデス)の録音で手伝いに来ているという。しばらくご無沙汰なので昨日、大急ぎで車を寄せて強盗のようにあたふたとスタジオに入って行った。
全身ゴールドで決めた私を見たらまたなんかいい曲作ってくれたりするかな、とわくわくしていたのだけど、あの巨体はいなかった。

代わりにと言ってはなんだけど、思いがけずにピリピがいた。

ピリピというのは結構有名なフラメンコのプロデューサーで、自身はギタリストだ。
奥さんはやり手のディレクターで、フランス人。ものすごくきれいな女の子を連れていた。
こんな娘がいたのか!!
ひとしきり、この子にクラシックバレエをやらせたい。誰か推薦してくれないかという話にいきなりなってしまった。まだパキートにもピリピにも挨拶抜き。
コンセルバトリオ(王立舞踊学校)なんか仕方ない、という悪口をさんざん言ってからデイエゴがいいな、と思った。
新体操じゃダメ?と聞くと、マルガリータはびっくり。
なんで新体操?と言う顔。
このデイエゴというのは世界で一番いいバレエ教師だからよ。と言っていきなり相手は合点して膝を打つって訳にはいかないだろうなぁ....後で電話して、と携帯を教えたけれどかけて来ない。

そういえば連絡がつかないと叱られてばかりいるので、仕方なく携帯電話をスペインでも持つことにしたけれど、全然持ち歩かない。バックや部屋の隅に置き去りにばかりしてしまう。
どうしても思い出せない。
着信履歴があっても相手にかけるのが怖い。叱られそうで。

車を運転しているか稽古しているかのどちらかなのだもの。
車を運転していないときは、大抵取り込み中だから電話なんか鳴っても聞こえない。
どこかに出しておいても体育館とか広い場所に居るからなくしてしまいそうだ。

私は毎日、体育館に忘れ物をするので有名だ。
子供達が私の物をいつも保管しておいてくれる。全く面目ない。
みんなにやにやしている。かわいい子達だ。

この間は日本で尚子と中島さんが買ってくれてセットアップしてくれた新品のパソコンを
ホテルに置いて行く所だった。テレビの上にちゃんと出しておいたら、テレビの黒と本体の黒が溶け合っていて一体化してしまってた。ああ、ドッキリ。
前のは壊して、今度のはなくしたらもう、日本でも見捨てられるだろう。

世界にはどんなに忙しくても怜悧に整然としている人はいくらでもいるだろうに、どうして私はこうやってどたどたしているだろう。
最近の私と来たらもう、レオタードのまま平気で外に出てそのまま車に乗って出かけてしまう。
車が故障したら道路に出るのが恥ずかしいに違いない。
それでももう着替えがばかばかしくてできない。着ては脱いでばかりだから外出着なんかに割く時間も無駄。
かくして、
「エレガンテ!!」のハレオがかかるのは舞台に居るときだけだ。
あれとこれと同一人物だとは、私の側近の人達はきっと思えないに違いない。

●2003年09月17日(水)

年度始め

スペインの年度始めは九月だ。
学校は教科書も新しく、学年も上がる。
お稽古事は入会金を払い直して一年が始まる。

三ヶ月の夏休みが終わってみんな調子が狂ったまま、あたふたと始める。だから何にも機能しない。
九月というのは「まだ始まらない年度始め」なのだ。10月になってやっと少し真面目になる。
スペインの凄さを知るために、ここに書いてあげようかな、と思う。書いているうちに自分の頭から湯気が出ないといいのだけど.......

その1、小学校(Colegio Educacion Primaria)
新体操娘が始業式に行くなり、明日から学校がないと言われてきた。
    ここは郊外の人気新都市で、突然増加の編入、転校生で机もイスも不足なのでいつ授業が始められるか分からないという。これ、まともな公立小学校の言い分。夏前に申し込みがあった筈なのだから十分に夏になんでも買えたじゃないの!!!というのは私の意見。

生徒と父兄は毎朝登校し、いつから始まるか毎日お伺いを立てろという学校のお達し。

友繁家の決断=行ってられるかそんなもの! 当分、家で日本語の国語だけやってなさい。
召集のかかった緊急父兄会にも出席なんかしない。どうせ何にも解決なんかしないのだ。忙しくってそんな下らないものなんかに出ていられるか。

かくしてよくやる自家製寺子屋。
子供は朝から怒鳴られながら教科書に取り組んでいる。
慣れない漢字につまづきながら早く始まって欲しいなぁ....と思っているに違いない。クリスマス前にはなんとかなるだろうか。ま、なるんじゃないのかな、いくら何でも。

その2、中学校(Instituto de Educacion Secundaria)
     私は学校なんか普通なら何でもいいと思っている。
     でも........
     クラスの約半数が落第して留年なのだそうだ。
     上の水泳娘のクラスメート半分は、年上の女の子達だ。

     去年までの有名私立校では水泳が続けられなかったから転向させた公立校だけれど、
     これもあんまりだ。
     始業早々、もう教師が休んでいるという。ああ、どうしてこう、極端から極端だろうか。

その3、全ての公共料金が間違いだらけで来ている。銀行の通知も間違っている。
     私はこういうのを正しに行くのが嫌なものだからいつも盗まれるに任せて目をつぶることにしている。
     きっと合計すると莫大な金額なんだろうな、と思うけれど
     スペインというのは絶対に電話一本でこういうことが直らない。10本かけても腹が立つだけだ。
     
     何日も無駄にする覚悟で、ある日を境に出かけて行かないとダメなのだ。

    行くと今日はオフィスの端末機が壊れてるとか言われる。担当が病気だとか、朝食に出て戻って来な     い、とかだ。ヒステリーにならないで建物から出て来れる人はそんなに多くない。

     ここは共産国なのかな、とよく思う。
    これより酷い国にだけは住めないといつも思う。

高速道路が全部タダ、車はその辺に停め放題。家が安い、町並みが整備されていてとても美しい。
海岸まで一時間で
いつでもどこでも地平線か、かなりのボリュームの空が見える。

つまりそういう事とこれらは交換条件なのだ。

でも、時々、何にもきちんとしないままなのにいらついて、どうにもならない時がある。
きっちり四角に納めたい欲求に駆られて胃がぐるぐるする。

ああ、ラテン・ストレス!!
こう呼ばずして、何と呼びます?

ま、朝は死にそうになったけれど、昼過ぎから夜まで筋肉痛で歩けなくなるくらいに鍛えた。
踊りがなかったら日本でもスペインでも生きて行けないとつくづく思う。

こういう事をしている時だけが、本当に清潔で、地に足のついた精神の統一が叶う。
この一点だけが真っ白に清潔なのだ。

体中にビタミンが行き渡り、柔軟な筋肉がバランスをキープしてくれていると感じる。
自分の体がすみずみまで、ちゃんと分かる。

明日も頑張らないと!負けずにね、何にも負けずに!!!!!

よーーーーし、月も美しいし、討ち死にのようになって寝てしまおう。
だって午前四時に起きて横浜の工事のために電話しないとなんだもの......(泣)

●2003年09月12日(金)

ホセ・ガルバン

日本滞在中のこの夏のある日だ。
突然、ホセ・ガルバンから電話がかかった。

Donde estas!!!

驚いたの、何のって.....新人公演があって今、東京に来ているんだって言う。

「僕は暇な時間がいっぱいあるから君のスクールに遊びに行くよ、どこ?どうやって行くの?僕は一人でどこにだって行けるよ!!」
なんだかやたらと勇ましいのだ。
本当に秋葉原なんていうごちゃごちゃの駅で昭和通り口なんてところに無事に降り立てるだろうか。
どんなにLISTOだと本人が自認しようが信用が置けない。

それに戸田公園なんていう駅にいるって言うのだもの。
なんでまた、そういう駅に?
どういう巡り合わせで、そういう駅近くに泊まっているのかと不思議で可笑しい。
ホセらしい気もしなくないけれど、この可笑しい伯父様こそ、私の愛するイスラエル・ガルバンの父様で、ラ・ノーチェ・フラメンカやソロコンパス・シリーズでお馴染みの大アーティストなのです。

で、来ました、来ました。八月の暑い朝に(本当は夜と約束したはずなのに)、思わずのけぞるようなラフなシャツに田舎風のポシェットを大きなお腹にのっけて昭和通りを闊歩して来る!
100メートルの向こうからでもお姿がはっきりと見てとれた。

あはははぁーーーー!!!
ホセが歩いて来る、秋葉スタジオ目指して。
カレー店を曲がって!

通りでキスと抱擁を交わす私達でした。
なんだか笑いが止まらなかったです。
可笑しい人ね、本当に。

新人公演に出る?とかで、北海道の参加者という女性だの大勢でやって来た。

うちのスタジオに入るなり、尾上梅幸さんなどと撮った写真を指差して、僕はこの素敵な思い出の写真を一枚も持ってないぞ!!!くれろーーー、くれろーーー!!と叫ぶ。

92年万博でジャパンデーに撮影された写真だ。
私とホセはこのイベントを指揮したのだった。

富士純子さんと尾上菊五郎さんの長男の、確か、当時牛之助さん(?)の美貌の天女と真っ黒に日焼けした私は同じ民族なのかぁ???とホセやイスラエルにさんざん冷やかされたのだった。

尾上一門の、日本舞踊の楚々とした美しい女性達と並ぶと、確かに同じ国民には見えない私でした。
一連の写真は、新聞社からいただいた物で、
水泳娘の私の長女がまだ二才の頃で、人間国宝の故尾上梅幸氏とルンバを踊っている、なんていう凄いスナップもあるのでした。

アーティストって本当に自分の写真がないものなのです。
仕事の度に、思い出用の写真の手配なんかしていられない。
例えば、マヌエラ・カラスコ本人より私の方がずっと彼女の写真を持っているくらいなのだから。

ホセは叫ぶ。この写真、ちょうだい!!!絶対だよーーーー!!!
(海瀬さん、そのうちコピーしてやってくださいねー内部連絡)

それにしても、最近はホセは自前で日本に来ようという勢いらしい。
自分で何件もの契約をアレンジして、地方都市に平気で飛び立つという。
マノーロ・マリンも北海道に行くんだよ、元気なのは僕だけじゃないさ、と言う。
そう言えば......
私は自分の国だから帰国するけれど、皆さん遠いのによくフライトに耐えてやっていらっしゃるものだと感心する。マノーロだって還暦を過ぎている筈だ。

僕の集中レッスンも、ここでアレンジしてよ、とホセが言う。

やってもいいですけれどね、ご期待に添えるかなぁ、
「君は安すぎ。僕にはその二倍の値段にしてよ」なんて言うのだもの。
たじたじしてしまう私です。どうしますか?皆さん、やっていただきたい?
ご要望があればいつでもアレンジします。........本当に。

http://www.flamencoole.com/

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