●2005年09月30日(金)
真夜中のぺテネーラス 夕べ遅くまで黙々と踊りこんでいたら 振付けられたものなんか雲散霧消してしまった。 これでギタリストが曲を作ると、また変わる。 歌い手が上手いと益々変わる。 本番になると又全然違うものを即興するのだ。 私はこれで生涯行くのだな、と思う。 決めた事なんか踊れない。 今朝、最後の仕上げ(始めてまだ四日)だから歌い手とギタリストに来てもらったら、振付家の様子がすごくおかしい。 言うとおりに踊らないから機嫌を損ねているのかな、と思っていたけれど、後から全部謎が解けた。 早朝からスタジオにビデオカメラが仕込んであったのだ。 私がその辺りに立っていると、どけと言うのだ。 振り付け師の後ろに立っていて何の不都合があるだろう??? どかないでいるとついに、録画しているんだからどけと言う。 これは私の専属のギタリストで、歌い手なのだ。 そして踊っているのは私で、振り付けはほとんど自分の物だ。 許可も願い出ないで、私がスーパーバイズの支払いをしているその時間内に、私の作品をこの振り付け師は、録画している。 ギャラを貰いながら。 あまりの厚顔に誰も口が利けなかった。 ばれてしまったらもう繕いもせずに、カメラを担いで録画し始めた。 私は、こんなに厚かましいと、もう怒る気にもなれない。 一度は太い釘を刺した。「この振り付けを日本で20人でも見たら友情もここまでよ」と。 うんうん勿論、これは自分のために録画しているんだよ、と苦しい言い訳をする。 自分のためだって?そんなわけないじゃないの。 益々、胸が悪くなる。 悪いけどあんたの振り付けなんかより、私のが上よ。 もう、じゃんじゃん、彼抜きで初めから振付けてしまう。 撮るなら撮りなさいよ、そういう気持ちになってしまった。 沈静した怒りを感じたけれど、誇りが傷ついたのは相手だと思う。 多分、傷つかないからやるのだろうけれど、客観的には、そういうことだ。 カメラに収めたいくらいに欲しい人の負けなのだ。 なんだこんな物、持ってけ 泥棒 宵越しの振りは持たねぇ、 熨斗つけてくれてやらぁ、ざます(笑) スタジオを出てくると、歌い手もギタリストも苦笑していた。 ミーティングも混ぜてギタリストを三時間も拘束してしまった。 それなのに、今日の分はいらないと言う。 ガソリン代くらい出させて.... がんとして受け取らない。 お気持ち、ありがとう!申し訳ないわね。 まぁ、幸先いいじゃない? すごく上手いギタリストと すごくいい声の歌い手と 悪くない振り付けらしいお墨付きをもらったのだから。 力が湧いて来たぞ。 私、このヌメロ、よくやれそうな気がする。 昔、できなくて良かったのだ。 きっとあの年頃では力が足りなかったに違いない。 これは本当に重い踊りだから、 栄光を手にしてフィニッシュを決めるには 相当の年季が要る。 スペインのこの四半世紀で、マヌエラ・バルガスしか踊った人をついぞ記録に見ない。 派手なリズムも追い上げの足もない。 呪文のようなメロディが続くだけなのだ。 週末にパテルナの村に行って来よう。 ぺテネーラス発祥の地 実在したという、妖婦、ぺテネーラス 踊りに霊感が宿るかも知れない。
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