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2008年10月のセビリア発信・つれづれ草
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●2008年10月26日(日)

マリオ・マジャ

について、後書きするという約束に縛られてその後が続きませんでした。簡単に書けるわけではないので他のニュースに飛んでしまいたいけど下に後で書くってある。じゃ、また...ていうので別のことがかけないままでした。
これだと先に行けないので 又別の機会に詳細するとしても
少し書き足します。

マリオ・マジャはコルドバに生まれた人だと聞いています。
けれども彼はサクロモンテと言う洞窟のジプシーとして
広く知られてい、この洞窟で踊って観光客相手に日銭を稼いでいた子供でした。生まれたのがスペイン内戦前後、第二次世界大戦の前くらいです。うーーーんと昔の世界をぼんやりと思い描いて下さいね。

ここで一人の外国人の女性画家に見初められます。
彼女はマリオを描いて絵のコンクールで入賞します。
当時としてはとてつもない大金が入ったと聞いています。
その一部だったか全部だったかをマリオに渡して舞踊の研鑽を積むようにとマドリーに旅立たせます。
彼のキャリアはここから大きく飛躍するのです。
ありとあらゆる舞踊を勉強します。当時のマドリーは大きな舞踊団が次々と林立して行く過渡期にあって それは優れた舞踊家が出てきていました。何でも踊れないといけなかった時代で それこそホタからクラシコ、全てです。今のフラメンコ一辺倒の時代と違うのでそれぞれの分野には今より優れたアーティストが居たと思います。
 さて、ここでビラール・ロペスの舞踊団に入り、世界を興業して行きます。

私が後年、マリオは絶対にブロードウエイのミュージカルに触発されたに違いないと思ったとおり、やっぱり彼はブロードウェイで舞台作りの発想を鍛えられたようです。
後年、第一回ビエナルに参加してーゲストとしてではないですよ。コンクールの応募者として出たんですーことごとく洗練された構成を観客に披露します。
えーーと これは1982年?頃の第一回ビエナルです。
この時の参加者ーゲストではないですよ、コンクール出場ですーには あの天才ホアン・ラミレス、ペパ・モンテス、アンへリータ・パルガス、それにマリオでした。この四人が熾烈な戦いをする最近とは全然違う面白いコンクールでした。
八百長を囁かれていたのは 賞はマリオにあげることに暗黙のうちに決まっていたので選外にするわけにはいかない超人気大スターのマヌエラ・カラスコ、マテイルデ・コラールの愛弟のミンブレは出場を許されませんでした。おかしいおかしいと囁かれていたものです。
まぁ 選外になればキャリアに傷がつくので暗黙の取引の上で出場というのは十分ありえますし、そうだったに違いないと確信している一人に私も加わります。

ともあれ、当事者でなければ これほど面白いコンクールはなかったです。
この舞台を見るために私はタブラオの専属契約を破って一年間浪人になります。劇場でマノーロ・マリンに見咎められてアーティストが別のアーティストを見るために仕事を棒に振るなんて!と叱責されました。が、あのめくるめくような炎の燃え立つ舞台を見た経験は生涯忘れられる物ではありません。
見なさい、あれからビエナルは堕落の一路でこんな面白いコンクールは二度と出てこなくなりました。今でも観客席に座るために舞台から降りた一年は、かけがえの無い選択だったと思っています。
さて、マリオ。演出が素晴らしかったです。
水際立っていました。けれども私の好きなタイプの男の踊り手ではありませんでした。野生の激しいコンパスの踊りが好きなのですが、彼のそれはとても洗練されていてジプシーではないみたいにアカデミックでした。でも、でもです、好き嫌いは別として確かに一流の折り紙をつけるだけの他に例の無い素晴らしい踊り手でした。好きじゃないのに魅了されるっていうのは凄いレベルに違いないのです。

この人に舞台の何たるかを教えられて 成長したアーティストに娘のベレン・マジャ、カルメン・コルテス、イスラエル・ガルバン、ラファエル・カンパージョ、ラファエラ・カラスコ、ベアトリース・マルティン数え切れないほどの人達が居ます。

私がマリオを見たあの舞台では 既に45歳か50歳と囁かれていたのですから 相当な鍛え方だったと思います。
細身でしなやかな体は 20代と言われてもいいくらいに絞り込んでありました。

後年、太ったマリオが舞台に出てきた時にみんながショックを受けたくらいに この人はこの体型で生まれて死んでいくのが当然だと誰もが思い込んでいたのでした。
後年、いかに彼が節制して厳しく体型を維持していたかが証明された一例です。

偉大なアーティストでした。
ずば抜けてモダンなフラメンコを 世界レベルの全ての舞踊家を説得できるだけの技術と発想で切り開いて行った先駆者でした。

あの素晴らしかったカルメン・モーラが奥さんで
忘れ形見がベレン・マジャです

またいつか思い出した事など加えて行きます

●2008年10月15日(水)

マリオ・マジャ

九月の末にマリオ・マジャが亡くなって
少し元気無くしています。
ちょっと前までそんなそぶりは全然見えなくて
いつかロペ・デ・ベガ劇場で会った時もいつもと変わりなく
若々しいなと思ったのに本当に残念です。
確か癌で亡くなったのでした。
これで70〜80年代に活躍していた人達が激減してしまうわけだけれど イスラエル・ガルバンなどの恩師、先駆者だったかけがえのない人です。そのモダンな芸風は独特で舞台作りの意表を突くやり方など
かつてなかった斬新さでいつも観客を驚かせました。
彼の特異な履歴とともに 私がいつもロマンチックに思い出す数々のエピソードがあります。

今 書く時間が無いので また時間作ってお知らせします
まずは お知らせまでです。

●2008年10月02日(木)

グラン・アントニオ

グラン・アントニオことアントニオ・ルイス・ソレール
今世紀最大のスペイン舞踊界の巨匠
数年前に亡くなったこの人の最後の伝記というか
インタビューを読んでいる。
何年もかけて取材されたもので 死後に発表する約束になっていいた物だ。

これが物凄く面白い。
スペイン内戦の前後から始まっているので
あの時代の踊り手がどんなだったかがアントニオの目と記憶で語られていて ただの伝説の人々が生き生きと目の前に見えるように登場する。

カルメン・アマヤがどんなに素晴らしくてアメリカでことごとく
観客を魅了したかが写実されている。
やっぱり....凄かったのね!
彼女が本当に踊れるのは二曲だけで
この二曲で十分人々が興奮して大感激したと書かれている。
ただしとても短いので ショーとしての構成は全体的に短い。
なるほど.....そうかもしれないなと納得する。

アントニオはスペインではアントニオ・バイラリンとして名が通っている。

この素晴らしい世紀の大天才の幼児時代からの回想がとても面白い。幼稚園の園服のまま いつも道端で踊ってポッケにいっぱいお金を膨らませて家に帰ったと言うのだ 笑
家々の窓からおひねりというか ご祝儀が飛んできたので
ピアノ弾きと組んでセビージャの街を流して歩いたのだそうだ。
このピアノというのは 下に車がついていて引いて行ける。
手回しのピアノなのだ。オルゴールの大きいのみたいな物だ。

なんだか良き時代の様子が彷彿とさせられる描写で
引き込まれる。

飲んだくれの父親と10人の兄弟を養うのに
母親があまりに苦労していたので 幼児ながら
見かねて少しでも家計を助けたくて街で踊ったと言う。
四歳からもうとどまるところを知らずついに生涯にわたって踊り手としてのキャリアがここに始まるのだ。

四歳!!

ゴヤの絵でおなじみのアルバ公爵夫人が出てくる。
アントニオは生涯結婚しなかったのだけれど
何十人という女性が華やかに登場する。
そしてそれと同じくらいの男性もだ。

しかも子供が居たと言うのだから驚いてしまう。
それが人もあろうにアルバ公爵夫人とに一男があるというのだ。
公爵夫人が認めなかったので父親がアントニオだと公表されなかった。
今、本が出て明るみに出てしまってどうするのかな と驚く。
アントニオは亡くなったけれど この一子は勿論
公爵夫人は健在なのだ。

なんとも....私はこの二人とも面識があるので
本当に驚いてしまいました。

芸についての細かいコメントと
私生活にとりどり現れる当時の大女優や貴族達。
ゴシップ記事と違って 生き生きと写実されている。
1920年代からほんの数年前までの世界を網羅している
興味深い本だ。

毎日楽しみに少しずつ読み進みます。

アントニオについては拙著 「かつて語られなかった」を
今一度拾ってみてくださいね

http://www.flamencoole.com/

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