●2000年12月30日(土)
【暮れも暮れ、つれづれにはセワシナイ日暮し日記】
日本が世界に誇る「踊るSE」ことHP作成者のNさんが、こんなページを作ってくれたので、2000年も余す所たったの一日となった晦日の本日、テスト日記。 ここのところ又がぜんおよばれが多い。日本のように高級レストラン、居酒屋その他に招かれるのではなくってスペインではお家によばれるのだ。昨日は若手ナンバーワンのギタリスト、パコ・フェルナンデスの娘が2才のお誕生日なので盛大なパーティが開かれて多くの著名なアーティストが顔をそろえた。不定期便に初の映像を載せたのがあった筈だ。ああしたメンバーがそろった。しかしそれにしても感心するのが、スペインの男性の家庭的で子煩悩な事だ。昨日はついにパコに聞いてしまった。ねぇ、あなたってこんなに家庭的な人だった?と。 子供が生まれてから益々そうなったらしいけれど、お家の飾りつけがすごいのだ。天井にはつるしきれないくらいの色とりどりの風船が夢のようにぎっしり貼り付けてある。こういう事は彼がやったに決まっている。 「いや、こんなんじゃ足らないんだ。年明けにさ、やっと家が完成するんだ。小さいけど庭付きのやつ。そうしたら子供の誕生日はこれ以上ない!てくらいに盛大にやってやれる。3才の来年のはさ、ピエロを雇ってものすごいやつにするよ!僕はこういう事のために働いているんだから!!」 胸にじんと来ませんか?私がスペイン人に感心するのは、若くて未婚のかっこいい男女が、例外なく子供好きでしかも実際によく子供の面倒が見れることなのだ。結婚している人はなおさらだ。 家族と離れるのがいやで外国に出る仕事を極力おさえてしまう有名アーティストもざらにいる。 あのギタリストは大金を積まないと日本に行かない。なぜなら子供に夢中だから、というのは当たり前の会話だ。スペインに暮らしていると彼らの気持ちはよく分かるけれど、日本の社会ではどうなのかしら、あんまりピンと来ないかも。 家の話題が最近多い。ホーム・パーティのぎっしりした季節だからかも知れない。 あの、国家栄誉賞に輝くクリスティーナ・オヨスとは昔から家が近くて年中行き合っていた事は既に書いている。朝に夕に豪邸の前を通ると書いたのはついこの間の事だ。今度は、知り合いの知り合いのそのまた....という筋の不動産業者の女性とある席で出会って、こんな話しを持ちかけられた。「あなたがきっと気に入るようなぴったりのお家があるのよ。地下にスタジオがついてるの。有名な踊り手の家なの。ちょっと見てみない?キーはここに持っているの。すぐ近くよ」 クリスティーナのでしょう?あの家はいやよ、と言ったら相手がびっくりした。 私は笑ってしまう。ついにここまで来たか、と。すれ違っているんじゃなくて道が交差してしまった。私はクリスティーナの家がお城のように大きくて、あんまり大きいので持ち主でさえ中にいるのがいやで、年中姪っ子のマンションに出入りしているのを知っているのだ。がらーん、と寂しくて居たたまらなくなるほど大きい家ということだ。庭だけでも私の家の八倍もある。今だって自分の庭に手が回らなくて失敗したと思っているのに、とんでもない話だ。お値段は、しかしその割にはすごくないけど、中にいて不幸な気分になるような家なんてとんでもない。 こじんまりとした小さな、暖かい、家庭的な家で、庭は手が回る程度。丹精したバラやジャスミンの香る、そういうのが一番だと思う。映画のようなすごい家に、びくびくしながら警報機に守られて暮らすなんて耐えられない。耐えられないから手放すのだもの、きっと。 日本の生徒からぞくぞくと故郷に帰省します!スキーに行ってます!毎日飲み会です! という知らせが来る。年賀状を嫌々書いてます....とか。しかし感心するのは、生徒がこれだけ居て、ただの一人も私に年賀状を出そうと思わない事だ。尊敬してる、大好きだ、と言う割にはひどいものだ。私はこの事実に時々唖然とする。不徳のなせる業だと言われるかも知れないけど、お正月に色気のないフアックス用紙がずずー!と出てきて「本年もよろしくお願いします」の文字を認めるとほとんど腹が立ってしまう。山盛りの年賀状を買い込んだ時、私の事は思い出さないのかな− というのは疑問に思うだけ野暮というものだ。 いいからねーーー!だからって義理の葉書送ってこないで。ほーんと、いいんだからあなた達の薄情はよーく分かってるから。という微妙なトーンで今年は終わる。
|