●2003年12月30日(火)
カナリア諸島ーテネリーフェ島ー
セビージャから一時間ちょっとでアフリカ大陸の西に浮かぶ島に着く。 スペイン領だけれど一時間早くなる。セビージャは7度だけれどここは25度だ。 避寒地として名高い。 免税の島としても有名らしい。 やたらに香水とかグッチなどの高級ブティックが並ぶ。 私はこの島にコンサートに来た事はあるけれど遊びに来た事がなかったので(ああーーーそう言えばどこにも遊びに行かない私ですーーー)お店をきょろきょろ、道をきょろきょろした事がなかった。 なんとこの島ではほとんどスペイン語を聞かない。 すれ違う人全部が英語圏、ドイツ語圏、フランス、イタリア語圏の外人ばかりだ。 道の看板もまず英語。 スペインにはこういう不思議な、現地の人口をしのぐ外人天国が結構ある。 ジェットソサエティで有名なマルページャ市なんかがそうだ。夏には現地のスペイン人の確か六倍くらいの外人が避暑に来る。エリザベス・テーラーとかオマーシヤリフも邸宅を持っているばかりか、土地開発など積極的に投資活動もしている。プロシアの宰相ビスマルクの孫に当たる名物婦人もここに住んでいる。世界中のお金持ちと俳優がヨットなんか浮かべているわけだ。 カナリア諸島というのは溶岩で出来た島なので 広大な自然公園はこの世のものとは思えないような、強いて言うと孫悟空のあの切り立った崖と剣山で出来た壮絶な光景に圧倒される。テイデというスペイン一の山は富士山より高い。登るつもりでふもとまでドライブして行ったけれど、強風のためにロープウエイが運行していなかった。 雪山をあおいで残念だったけれど、なんとなくほっとする。 スペインのロープウエイなんて怖い。 テイデ山の雪を見つつ、海岸ではみんなが泳いでいる。 みんなといるのが嫌なら、ちょっと離れるとプライベートビーチみたいに一人っきりになれる。 車を借りて島をめぐったり、勇気があればスカイダイビング、勿論、海にもぐるのも、海賊船に乗って他の島を観光に行くのも自在だ。 気球を上げて海上に漂っている人もいる。 海の青、空の青にも染まず漂う、を地で行くような天晴れさだ。 2日で不安になる。 ノエリも三日目には不安になっていた。 つくづくと休暇が似合わない家族なのだ。 訓練が気になる。 私は胸に踊りの構想が湧き上がり、なんとなくじたばたしそうになる。 それに旅行に付き物の美食と過食の限りを尽くす、あれが本当に不安をかきたてる。 ご馳走の連続って、恐怖だ。 ちょっとやそっとの運動では足りない私達は、三泊が限度かもしれない。水泳娘のノエリは毎日6000メートル平均泳がされているので、安穏な旅行は喜びつつ、不安になるみたいだ。 私も三日が限度だ。稽古無しでいるのは不安だ。 下の子だけが網を手にして何時間でもカニやえびと戯れている。 うちの虫愛ずる新体操娘だ。 カナリアで唯一欲しくてたまらなかったのは、地球ができたての頃の岩石だった。 その辺にいくらでも転がっている。大玉すいかくらいのを二つ選んでどうしても庭に飾りたいと思い詰めたけれど、又空港でさんざんな目に会うのはかなわないと断念した。 ホテルの部屋から未練に引きずられつつ石を捨てに出る。ああ....惜しいーーー 不安だなんだと言いながらも、フラメンコの事、舞踊の事、日本の事をいっぱい考えた。 明治38年からの日本の40年くらいの恥辱の戦争史もしっかり読んだ。 ああ、日本史のスペイン語版を絶対に出さなければ、と辛く思った。スペイン育ちでこんなに訓練に明け暮れている娘達に小村寿太郎だの、孫文だの、明治だのってとても伝えられない。 スペイン語で書かなければ! 絶対にこれだけはやらないといけないと、いつも思う。 で、本当にやるだろうか....?年賀状も書けないのに? 自分には夜の眠りもなくなってしまうほどに心を掻き立てられる事がいっぱいあるんだ、と再認識した。薄ぼんやりと過ごすのはやめようと殊勝に思ったりする。 思う傍から、ピラール・ロペスが生きているうちに早く会いに行こうとか、取りとめも無く焦る。 そうやって半狂人のようになりながら、なんだか楽しい気がしなくもなく、早く筋トレがしたいと思いつつ、帰って来ました。まぁ、何とばかばかしい私であることでしょうね。皆様、お笑いくださいませ。年の暮の笑いおさめですね。
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