フラメンコ・オーレ フラメンコファンと練習生を一挙にスペインへ!
音楽・踊り・歌の本格サイト〜友繁晶子がスペインから応援

フラメンコ・オーレ!/スペイン発のフラメンコ情報サイトフラメンコ・アカデミー/友繁晶子の本格フラメンコスクールフラメンコについての質問/スペインについての質問/ご意見・ご感想スペイン語/***セビリア発信・つれづれ草スペイン発

フラメンコ・オーレ!

フラメンコって何?アンダルシアって?セビリア・セビージャ?スペイン地理・歴史専門書
友繁晶子大人になってからの舞踊子供から始めるフラメンコ・スパニッシュ・クラシックバレエ
何年やっても上手にならない!あなたへバレエのページ 速報・集中レッスンスペイン留学レポートスペイン研修旅行レポート2004フラメンコ・全パス/朝晩全てに出られるコースUP!
友繁晶子・公演のお知らせ


2003年12月のセビリア発信・つれづれ草
[HOMEに戻る] [過去のセビリア発信・つれづれ草一覧] [管理者モード]
●2003年12月30日(火)

カナリア諸島ーテネリーフェ島ー


セビージャから一時間ちょっとでアフリカ大陸の西に浮かぶ島に着く。
スペイン領だけれど一時間早くなる。セビージャは7度だけれどここは25度だ。
避寒地として名高い。
免税の島としても有名らしい。
やたらに香水とかグッチなどの高級ブティックが並ぶ。

私はこの島にコンサートに来た事はあるけれど遊びに来た事がなかったので(ああーーーそう言えばどこにも遊びに行かない私ですーーー)お店をきょろきょろ、道をきょろきょろした事がなかった。

なんとこの島ではほとんどスペイン語を聞かない。
すれ違う人全部が英語圏、ドイツ語圏、フランス、イタリア語圏の外人ばかりだ。
道の看板もまず英語。
スペインにはこういう不思議な、現地の人口をしのぐ外人天国が結構ある。
ジェットソサエティで有名なマルページャ市なんかがそうだ。夏には現地のスペイン人の確か六倍くらいの外人が避暑に来る。エリザベス・テーラーとかオマーシヤリフも邸宅を持っているばかりか、土地開発など積極的に投資活動もしている。プロシアの宰相ビスマルクの孫に当たる名物婦人もここに住んでいる。世界中のお金持ちと俳優がヨットなんか浮かべているわけだ。

カナリア諸島というのは溶岩で出来た島なので
広大な自然公園はこの世のものとは思えないような、強いて言うと孫悟空のあの切り立った崖と剣山で出来た壮絶な光景に圧倒される。テイデというスペイン一の山は富士山より高い。登るつもりでふもとまでドライブして行ったけれど、強風のためにロープウエイが運行していなかった。
雪山をあおいで残念だったけれど、なんとなくほっとする。
スペインのロープウエイなんて怖い。

テイデ山の雪を見つつ、海岸ではみんなが泳いでいる。
みんなといるのが嫌なら、ちょっと離れるとプライベートビーチみたいに一人っきりになれる。
車を借りて島をめぐったり、勇気があればスカイダイビング、勿論、海にもぐるのも、海賊船に乗って他の島を観光に行くのも自在だ。
気球を上げて海上に漂っている人もいる。
海の青、空の青にも染まず漂う、を地で行くような天晴れさだ。

2日で不安になる。
ノエリも三日目には不安になっていた。
つくづくと休暇が似合わない家族なのだ。
訓練が気になる。

私は胸に踊りの構想が湧き上がり、なんとなくじたばたしそうになる。
それに旅行に付き物の美食と過食の限りを尽くす、あれが本当に不安をかきたてる。
ご馳走の連続って、恐怖だ。
ちょっとやそっとの運動では足りない私達は、三泊が限度かもしれない。水泳娘のノエリは毎日6000メートル平均泳がされているので、安穏な旅行は喜びつつ、不安になるみたいだ。
私も三日が限度だ。稽古無しでいるのは不安だ。
下の子だけが網を手にして何時間でもカニやえびと戯れている。
うちの虫愛ずる新体操娘だ。

カナリアで唯一欲しくてたまらなかったのは、地球ができたての頃の岩石だった。
その辺にいくらでも転がっている。大玉すいかくらいのを二つ選んでどうしても庭に飾りたいと思い詰めたけれど、又空港でさんざんな目に会うのはかなわないと断念した。
ホテルの部屋から未練に引きずられつつ石を捨てに出る。ああ....惜しいーーー

不安だなんだと言いながらも、フラメンコの事、舞踊の事、日本の事をいっぱい考えた。
明治38年からの日本の40年くらいの恥辱の戦争史もしっかり読んだ。
ああ、日本史のスペイン語版を絶対に出さなければ、と辛く思った。スペイン育ちでこんなに訓練に明け暮れている娘達に小村寿太郎だの、孫文だの、明治だのってとても伝えられない。
スペイン語で書かなければ!
絶対にこれだけはやらないといけないと、いつも思う。
で、本当にやるだろうか....?年賀状も書けないのに?

自分には夜の眠りもなくなってしまうほどに心を掻き立てられる事がいっぱいあるんだ、と再認識した。薄ぼんやりと過ごすのはやめようと殊勝に思ったりする。
思う傍から、ピラール・ロペスが生きているうちに早く会いに行こうとか、取りとめも無く焦る。
そうやって半狂人のようになりながら、なんだか楽しい気がしなくもなく、早く筋トレがしたいと思いつつ、帰って来ました。まぁ、何とばかばかしい私であることでしょうね。皆様、お笑いくださいませ。年の暮の笑いおさめですね。

●2003年12月22日(月)

友繁晶子の真実

土曜日にクラブのクリスマス恒例、一大イベントの水泳競技会があった。
まだ歩けない赤ちゃんをインストラクターがプールにどぼんと落とすと
ひよこみたいな赤ちゃんは大海とも言えるような25メートルを死に物狂いで泳ぎ着く。
感動的だ。ここでは、歩けない年の赤ちゃんでも泳げる。

90才を超えるようなお爺さん、お婆さんも勇壮な姿で飛び込む。
こういう全ての年代のスイマー達の大会なのだ。
中堅では元オリンピック選手というのもいるし、大体においては選手上がりの人ばかりのクラブだ。

子供達はほとんどが選手で、このクラブは日本の近隣にあるジムなどとはそういう意味で違う。

私の家族は私以外全員、これに出場する。
私はこんな所で何百人もの聴衆と選手の見守る中で必死に泳ぐのなんか恥ずかしくて嫌だ。
毎年みんなに揶揄されるが絶対に出ない。
見に行くのもめんどくさいくらいだ。

けれどもどんな大会でも来なくてもいいと言ってくれる長女のノエリが、前の晩から観戦に来いと言って珍しくうるさい。
私と違って口数の少ない典型的スポーツ少女の彼女は、どうしてだか理由は特に言わない。
朝も早々と布団をはがしに来た。
「どうしてそんなに行って欲しい?」
「...........」
あっ!!!もしかして年の終わりだから何か特別な賞でもいただく事になってる?と聞くと、初めてそうだと言う。
私ほど水泳界に無知なのはいないが、一昨日、彼女のスポーツ歴を初めて聞いたら2003年はクラブの
創立以来の記録を更新したのだという。

このクラブは創立が1931年なので過去72年間に出た全ての女性選手の記録を破って、燦然とその名が輝いているのだと言う。
へえーーーーー!!!!
驚いてしまったのだ。

先月からずっとそんなのは茶の間で話題になっているという。

ママはちゃんと聞いてないから、とかぼそっと言うのだ。
話題と言ったって、きっと夕食時に一度さらりと出たくらいだ。
うちはあんまりこういう事で騒がない家族なのだ。
聞き逃してしまったみたいだ。

1931年というのは、市民戦争の前ですから。
ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」、のあれより前です。
それから何千人何万人か知らないけれどクラブの歴史の続く限りの女性選手の中で一番の記録を打ち立てた。
それが自分の娘というのだから、この式典には行かないとさすがにまずい。

で、クラブに着くとプールのはるかかなたにいっぱい式台に載っているメダルの中にひときわ大きな、大きな楯がある。
「あんなに凄いのを戴くの?」
と囁くと、うーーーん、そうだと思うな。と答える。

競技が始まってこの子の泳ぎを見たら、あまりに美しいフォームで本当に感動してしまった。
(なんとでも言ってーーー親ばかとでも。)でも本当に無駄のない研ぎ澄まされた、自然なしなやかな魚のような泳ぎで、他の選手をあっと言う間にプール半分も引き離してしまう。
偉いものだなぁ、と感心。

.......で、これを見たらもう、すぐに飽きてしまった。

下の新体操娘もあと数時間後に出場だけれど、まだ間がある。
二人して連れ立って外にお茶を戴きに行ってしまった。

小一時間もして戻ると、ノエリがちょっと怖い顔をして、もう表彰されてあのさっきの楯を戴いてしまったと言う。
ママは見てくれなかったじゃない!
えーーーーー???(結婚式に遅れた花婿のように具合が悪い)
テレビカメラだって回っていたのよ!!私のこと撮りに来たんだから、と言う。

他の親達にも呆れられてしまった。
何ていう不覚.............言葉がないです。

新体操娘も水泳帽かぶり、「スピード」の玄人はだしの水着を着て飛び込んだ。
これも本当に早い。
どうして水泳選手にしないかとみんなに言われる。
ああ、この子くらいはなんか踊りの身辺に泳がせておいて欲しい、と死守したい気持ちだ。

かくして、父親と子供二人、メダルだのなんだの首から下げて退場。
たったの二時間半でも温水プールの熱気に当たってしまって「早く、早く家にぃぃぃぃ」と堪えきれない私。
勿論、首からメダルは一つもかかっていない。

あんなに寡黙な子の願いだったみたいな表彰式も見逃してしまって........まったくねぇ。
償いようがないです。ああ。

●2003年12月18日(木)

セビージャの空港で


映画のワンシーンのような酷い目に会いました。

だからね、私はいつも言うのですよ。
ビジネスクラスだの、ずり落ちるようなリクライニングのイスベッドだの
快適な空の旅だのと言っても、飛行機の前後がやっぱり非常に過酷に出来ている。
だから間で飴玉のようなサービスしてもらっても何にもならないのだ、と。

日本の家なりホテルなりを出てから旅は始まる。
だから最終の空港に着いた時には24時間は経っている。
頭はぼうっとしている。一刻も早く税関を抜けてシャバに出たい。
出たくて狂人になりそうな思いでガラス戸の向こうにちらつく出迎えの人ごみに気が急く。

ところがここが最後の関門で、私はよくつかまる。
待ち構えているのは、
税関員でなくて、グアルディア・シビルという特高警察なのだ。

この特別な警察はフランコ独裁政権下ではさんざん思想弾圧、拷問、監禁、死刑を行って来た警察で
この手の警察はもう日本にもないから想像が難しいかもしれない。

何気ないふりをしてふらりと寄ってきて会話を引き出し、
荷物が来る前から目星をつけているのだ。
ロシアか東欧かはたまた中近東かというように恐ろしい。

ちょうど私の乗ったパリ経由と同時にロンドン経由の飛行機や、カナリア諸島のフライトも着いたのでセビージャの夜の最終は非常に混雑していた。
200人なんてものじゃないと思う。
相当な人の流れがあり、全員、足も止めずにこの警察の前をフリーパスで出て行くのに、私一人だけが止められて、全部の荷物を精密分解というくらいに見られた。

まずい物がぞろぞろ出てきてしまったのだ。

生徒をおつかいにやって値段もよくわからないままにパックしたビデオとかカメラが新品の袋のまま出現するし、宝石がひよこのお菓子箱に、まるで隠していたようにして出て来たときには息が止まりそうになった。

申告するものなんかないと言ってしまっておいて、これらの事を忘れてました、なんていうのは通らない。
忘れていて更に値段は知らない、というのはここでは通らない。
前から持っているもの、適当に見繕ってもらって最後の日に買ってもらって中身も見ないでしまった、なんてことは普通の常識では通らない。
通らないということまで忘れてしまうくらいに、多忙で混沌としていた。

なんで高価な物を手荷物に持っていないでスーツケースに放り込んであるのか、というのも怪しい。怪しすぎて息が止まるくらいだ。バックが無くなるのにかけては世界一のシャルル・ドゴール空港経由だというのに!

分かりました、頭もぼうっとしてうっかりしました。みんな取り上げてくれていいです、と言うのも益々怪しい。

オフィスにご同行下さいっていうんで、もっと偉い、もっと見ただけで怖い、額に弾傷みたいのが深く刻まれた彼らの上司のところに連れて行かれてしまった。
軍服ダーーーー怖いわーーーーー!!!

ロミー・シュナイダーの映画にこんな場面あったぞ、と思う。
アンネ・フランクの隠れ家はオランダの運河から見たばかりだ。
007はどうやって切り抜けるのだっけ?
私は女スパイのカッコいいのだけは無縁だな、などと脈絡無く思ったりする。

笑いがこみ上げて来るのと、こら!!神妙にしないと本当に大変なことになるぞ!!と叱る自分が交錯する。

実際、この国にはエターラという物凄いテロリストが根絶できずに徘徊しているのだ。
みくびってはいけない。
北はアフリカ経由で麻薬も来るし、スパイだのサスペンス物の本場なのだ。
日本とは違う。
この人達は年中、そういうやからを相手に検挙したり、自身が殺されかかっているのだ。

勿論、私の犯罪歴はコンピューターで検索された。

名誉留学生というのがまず出たらしい。
輝かしい芸歴よ、ありがとう!!
いつもはまるで自分じゃないみたいな経歴ですーーーなんてへらへら笑っていたけれど、
よくぞ出てくれた、私の芸歴。
スペイン外務省、ありがとう!!!て言う気持ちだ。

12:00を回る頃、瀕死のシンデレラ・リバティーって感じの私は、最後の乗客として空港の裏口から解放してもらえた。
これがもう、映画だったら効果やり過ぎってくらいに深い、深い霧の中、白い日産プリマスター目掛けて走る私でした。アーーーーー、命からがら。(日産よ、協賛スポンサー検討して。こんなとこに居てもちゃんと国産車買ってる!)

今日、デイエゴに聞いた所では、前回の公演でアントニオ・カナーレスはニューヨークで荷物にとどまらず、真っ裸にされたそうな。恥辱と憤怒の彼は、生きている限り、二度とアメリカなんか行くもんか!!と吼えたそう。

はだかんぼにもされないで、何にも没収されないで開放されたなんて、グアルディア・シビルとしてはすごく上等なんじゃない?
そう、みんなに慰めてもらった。........奇跡のようだったかも知れない。
取り上げてくれていいです!て本気で言ったのに、みんな返してくれたのだ。
何故だろう.......



http://www.flamencoole.com/

フラメンコ・オーレ!〜スペイン発フラメンコ情報サイト〜 メール


WebDiary CGI-LAND