フラメンコ・オーレ フラメンコファンと練習生を一挙にスペインへ!
音楽・踊り・歌の本格サイト〜友繁晶子がスペインから応援

フラメンコ・オーレ!/スペイン発のフラメンコ情報サイトフラメンコ・アカデミー/友繁晶子の本格フラメンコスクールフラメンコについての質問/スペインについての質問/ご意見・ご感想スペイン語/***セビリア発信・つれづれ草スペイン発

フラメンコ・オーレ!

フラメンコって何?アンダルシアって?セビリア・セビージャ?スペイン地理・歴史専門書
友繁晶子大人になってからの舞踊子供から始めるフラメンコ・スパニッシュ・クラシックバレエ
何年やっても上手にならない!あなたへバレエのページ 速報・集中レッスンスペイン留学レポートスペイン研修旅行レポート2004フラメンコ・全パス/朝晩全てに出られるコースUP!
友繁晶子・公演のお知らせ


2005年12月のセビリア発信・つれづれ草
[HOMEに戻る] [過去のセビリア発信・つれづれ草一覧] [管理者モード]
●2005年12月31日(土)

暮れ...

新体操娘は合宿していていない

水泳娘はグラナダで殺人的な強化合宿からげっそり面やつれして帰って来た。で、もう今朝は大晦日だというのに朝の七時から訓練に行っている。

この上の娘は無口で言葉数が少ないから、必要最小限のことしか言わない。
それでもグラナダの富士山より高い山のある、標高何千メートルだかの、ヨーロッパで一番酸素の少ない訓練所での合宿は壮絶だったと語る。息ができないらしい。続かない。

朝の七時にプールに飛び込んで一日が始まる。
このプールが温水なんかでは勿論無く、シェラ・ネバダの雪解け水を張ったプールなんだそうだ。
氷が浮いてる。
目覚めた途端にこの水の恐ろしさに、みんな身震いしたそうな。

訓練はとめどもなくプログラムされていて、
最終の泳ぎが夜の11:00だったというから
私はモニターは何を考えているのかな、と思った。

ドイツからまたもやオリンピックチームが来ていて
一緒に訓練していたらしいが、この雲を突くような大男達を見かけているのも なんとなく恐ろしかったと娘が言う。

もう聞いているだけで気が沈むので
ああ、もういいから、と止めないといけなかった。

うちでは誰も私の公演の事なんか歯牙にもかけてくれない。

この薄ら寒いのに氷のプールだの、片面風の吹きさらしの体育館で猛烈な訓練をしている選手達には、そんなにきつい仕事とも思えないのだろう。

さぁて、同情されないところで私もダッシュにかかろう
暮れも正月も無い。

●2005年12月30日(金)

べテネーラの人格をどうしようかと 物凄く悩んでいる。

最後にどうなっても
誰からも同情されないような女になりそうだ。

前作の鏡の向こうに、の女性像は
心に通う物があったから
人々の気持ちに清潔な儚い、悲しい感動を呼び起こすことができたけれど、今度のは女には好かれそうにない人物だから
最後に感動がきっと無い。

感動しないと つまらないと思われるかもしれない。

最後を感動で〆たいと思うと
人格の解釈を違う観点からしないといけない。

そうすると史実と違ってしまう。
ペテネーラの詩と違ってしまうのだ。

 これは作品にする時に脚色しても構わないはずなのだけれど
今度の場合は、私一人とペドロと踊り手達で対立意見になってとても勝ち目がない。

史実に忠実、詩の通りにして、感動できない女性像で
舞台は終わりそうだ。
これは賭けになってしまう。

最後に観客は「感動」に至らないで、なるほどそういう女だったのか、と「納得」する作品になってしまう。

困ったなと思う。
人は感動したいのだ。

ペテネーラは、妖艶な悪い女で
曖昧で、気まぐれで、筋が通らない女なのだ。

女性に共感されることが絶対にないまま
村八分にされる。

かわいそうで悲しい女性だったから、辛いお話なのではなく
彼女をめぐって、男性が破滅して行き、
それゆえに、彼女に悲哀がつきまとうのだ。

古い時代の堅気な家庭の主婦には
目の敵にされた女性だ。

Muger Fatal

やれるかな?もう...辛い役どころだ。難しい。

●2005年12月29日(木)

今日の総稽古は白熱だった。

今更ながらだけれど、一級のアーティストってこんなに言葉少ない説明だけで、後は黙々と自分でやるんだ....と驚いた。

ペドロが「自分が振付ける」と言っていたブレリアだけれど
私は言葉を真に受けて、何か「ここはこう、次にこう、ちょっとやってみて、うん、そうそう...」こんな風な情景を思い浮かべていた。ベジャールの振り付けみたいに試したり、やめたり、あの人ほど時間はかけなくても、少なくても「何分かは」試行錯誤をやってみるのかな、と。

そうしたら昨日いきなり弾き出して、パコデルシアみたいにあごで歌、踊り一コンパス、とか指揮者のように檄を飛ばして 良し、て感じで終わった。

ざっと通してみたんだなとぼんやりしていたら、どうもそれが彼の「振付けた」らしかった。

間抜けなことに、この事実が分ったのすら一時間後だ。
それっきりやらなかったから...

二人のバイラオールは、がたがたがたっと、なんか足を研究している。おお、これだ!これならぴったりくるぜ、とか言い合っているのを何となくぼんやり見るというか聞いていたのだけど、ペドロがちらっと一度きりやったフアルセータに足を組み込んでいるだなんて夢にも思わなかった。他の事で忙しかったし。

今日になってから16コンパスの後に7で終わるリズムをやっていたんだと知る。え?何?これ、私もやるの?
笑っちゃおうかな....もう....

さすがにこういう凝ったリズムは何コンバスって数えるらしい。

私は言わずと知れた数えられないバイラオーラだから16コンパスなんて長い道のり、数えるのは初体験だ。

ウインドーズ98で十分気に入ってる、と思っていたけれど
周りがみんなXPになっていると、気に入らなくても自分もXPに突然ならないといけない。=フラメンコの話よ、分る?

「新幹線で通り過ぎているのに、駅の広告を読むみたいに難しい足のコンパス」を年末の宿題でやらないといけない。

もう、笑うしかないかな、と思っている。
こういうものは、いくら偉大なアーティストのマテイルデでもぺパ・モンテスでも絶対にできないだろうな、と思う。

ああいうふっくりした踊り手は、ペドロのギターにも似合わないけれど、見掛けが若くて細いというだけで、本当はぺパ・モンテスなのにぎんぎんの最新フラメンコをやらされてしまうなんて!

フランシーとのデュオのシギリージャが今日、最終稽古を終えたけれど、ペドロが手が駄目になりそうだというくらいに、きつい。

へスースとのAプロのタラントも物凄い。

私の二人の相手役は、28歳と30歳の血気の若者だ。
経験も十分にあって旬のお年頃の男性は、力が余るほどあり、駿馬のようにバイタリティに溢れている。

これに対抗馬として二人相手にしているんだから、もうこれだけで表彰されてもいいかもしれない。

と、慰めたところで、さぁて年末は宿題のモザイク超特急コンパスの克服だ。

私って本当に貧乏暇無しだ。あーーーーあ。



●2005年12月28日(水)

うなされる夜

アーティストが公演前に告白するのは、どうかと思うが
生徒のためだったら、これは芸の本質を知る上で役立つ。

昨日の総稽古は上手く行ったと思っていたけれど
夜更けてビデオを見てみるととんでもなかった。
細部にわたって気に入らない箇所の連続で、そのままベッドに持ち込んで何度も検証して目を覆わんばかり。

新体操娘を揺り起こして、ちょっとこれ、見てみて。
最近、プロ並みの心眼を持っている私の下の娘は
一秒の半分くらいの速さでありとあらゆる舞踊の欠点を指摘するのだ。
ねぇ、これどう思う?

私と同じ意見をすらすら言うので、もう夜の眠りはどこかに吹き飛んでしまった。

疲れているからもう休まないと、と思う傍から
ああ、あれがまずい、これが馬鹿らしい、あそこが足りないと
次々と浮かんでくる。
気がつくとベッドの下で足をガタガタやってる。
起き上がってサポーターをつけて何回もフィニッシュを研究しだす。もう、狂人としか見えないだろうな、こうなると。

三時を回ってから本当にこれはいけないとキッチンに下りて
ナイトキャップをしてみたけれど、随分長いことお酒をたしなまないから、本当に気分が悪くなってしまった。

夢の中でガデスが出てきて、ホセ・アントニオが「彼は踊りがまずいと直後に吐くんです」と証言している。

娘のノエリアの乳母車に人影が射すから誰かと振り返ると
クリスティーナ・オヨスが悄然と立っている。私は今読んでいたばかりの彼女の前夜の舞台批評の隠し場に困る。新聞に酷評されていたのだ。

なんでこんなことが夢に出てくるのだろう、と夢で考えている。これらは夢でなくて現実に起きたことなのだけれど、私は過去の現実をよく夢で追体験する。

そうして思い出と夢と夢の中の思い出と、なんでこんな夢を見る?と疑って分析している脳との間で焦燥しきるのだ。

明け方にびっしょりと寝汗をかいて、まだあのシーンは変えないと、と思っている。

朝になってペドロが珍しく一番乗りでやって来たから
あのシーンは変えるわよ、と言うと
言い合いになって押し切られてしまった。
どうあがいても妥協してくれない。
踊り手たちが集まると、アキコが君達は駄目だと言ってるとケロリとばらしてしまう。

いや、これはちゃんと上手くやれると二人で猛烈に稽古しだしたので、もう止めようがなくなる。

あんなに一晩中苦しんだのに、お昼過ぎには、そんなに悪くないかもしれないと思い始めていた。

あーーーーーー疲れる、馬鹿馬鹿しい。

●2005年12月27日(火)

ペテネーラの衣装が素晴らしい出来でとても嬉しい
スタジオに掛けて置くだけで、妖気が漂う。

又、もうあなたの衣装は二度と嫌!!
と言われた、いわく付きの他の衣装も本当に良い出来だった。

ここ近年、ずっと薄物のドレス生地にばかり心惹かれるので
縫う人には並な苦労ではないらしい

シャンタンの素晴らしい刺繍生地も輝くような美しさで上がって来た。どれもこれもいいものばかりで、やっぱり熟練の洋裁師は違うと感心した。

最近しきりと引退を匂わせるので、恐々としている。
彼女の作る衣装は踊りやすさが全然違うし
まとっただけで作品に意欲が湧くのだ。

先日、仮縫いの時に日本に行くというサンドラ・ゲレーロと鉢合わせた。びっびたに詰めてタイトの上にもタイトにするので
仮縫い師は悲鳴をあげていた。

帰りがけに犬の散歩を口実にサンドラをアトリエに置いて先生が出てしまった。
私が目を丸くしていると、あの人とは年中喧嘩よ、と笑う。

アレグリアスの衣装は少し地味かもしれない。
プリーツ加工に一ヶ月もかかった。
地味なのだけどなんとなく甘い品の良さの漂う衣装だ。
こういうのもたまにはいい。

無地は美しい。照明の技が映える。

ああ、憂鬱だ。明日の朝一番で総稽古だ。
何度やってもドキドキする
気分が悪くなるくらいだ。

●2005年12月24日(土)

後部座席に出来上がった衣装を山のように積んで
ペドロの家に寄る

パトカーが道を塞いで進入禁止だと冷酷に言う

そんなぁ、この道からしか入れないのに...

じゃあ二階建てバスが終わるまで待つんだね、と言う

何の二階建てだってぇ?ぼかんとしている私の前を

お菓子とおもちゃをいっぱい積んだバスがのろのろと横切っていく。

べドロの家の沿道にひしめく人に次々と投げる
おもちゃとお菓子の奪い合いだ。

スペインでは一月六日がクリスマスで、山車が出るのだけど
ペドロのところでは23日の夜らしい。

私は忍耐してバスの後ろにじっと待つ
ペドロが察して来てくれたので車に乗り込んでもらって
花吹雪とキャンディーの雨の注ぐ中で
ペテネーラスの曲の打ち合わせをする。

せっかく作曲してくれたけれど、私の思っているのと
イメージが違うからこのクリスマスになんとかいじってみて欲しいと説明。
この人のいいところは、こういう要求に気を悪くしないところだ。
フランシスとのタンゴも火曜までに全然違う趣向で
作曲して欲しいと頼む

ここを右に出て山車から逃れてね!!
メリークリスマス!と抱擁し合って別れる。

が、山車は全然進んでくれない。

仕方ないからドアを開けて、道にばらまかれたキャンディーを拾って口中に投げ込む。
スペインでの暮らし方はこうだ。

ハイウエイを飛ばしてスタジオに戻る

水泳娘が合宿から帰って夕食についている気配を感じる
早く合流したいな、とじりじりしながら2時間ばかり稽古する

へスースのマッハの締めをおさらいする。
これ、難し過ぎよと抗議したのだけど
なぁに君ならやれるさ、クリスマスって暇があるしさ、と一蹴されてしまったのだ。

二人の違う個性の男性とのデュオは、本当に何年分かの勉強を一気に強いられる感じだ。
二人の男性に踊らせてラクしようとちらっと思った気がするのだけど、さぁて、どこで番狂わせになったろう

とんでもないことになっちまったぜ!


●2005年12月21日(水)

昨日は朝の11時にフランシスの稽古場に着くと
へスースとフランシスが全身汗まみれになって踊りこんでいた。
おお!

とても寒い朝で10:00から真面目に稽古していたなんて
感動的だ。二人とも凄く真面目なのだ。
嬉しくなってしまった。

フランシスとタンゴの振り付けに入る。
へスースと踊る物とは全く別物になる

昨年、ホアン・オガジャに教えても全然できなかった
数々のテクニックが、フランシスとだとすいすいできる
別の才能の持ち主なのだ。
ホアンは素晴らしい踊り手だけど、自分の芸が確立しきっていて
他の事はできにくかった=これは当然なことですから仕方無いの。
フランシスは私がやりたいと思っている方面のテクニックをふんだんに持っているのでとても楽だ。
とても面白い展開になってきた
と、同時に振り付けが多くて、私の課題がどんどん増える。

今朝はへスースに自分の稽古場に来てらって、タラントの〆のタンゴを振付けた。
フラメンコのアイレに溢れた素晴らしいコンパスの持ち主だから、タンゴでは、ほとんど全部彼の意見を入れた。

カッコいいコンパスの素晴らしいタンゴになる。

へスースは、このくらい、いいじゃないというような一拍に凄く拘る人なので
私の宿題は山積みだ。

クリスマスもなければ週末も無い
27日の総稽古までに全部の山積みを突き崩してカッコ良くなってないといけない。

あーーーーーー苦しい

合間で衣装の仮縫いにも行かないといけないし
今日が誕生日だって 関係ない
みんなでそそくさとケーキを食べただけで夫々が訓練に出かけて
一貫の終わり。

もう夜だ。明日の朝一番でヘスースと別のタンゴを振付ける
何か考えをまとめておかなくちゃ。プログラムのハイライトだ


●2005年12月17日(土)

昨日、ペドロとホセアンヘル・カルモーナが来てくれて
へスース・アギレーラとAプログラムで踊るタラントを磨いた。

へスースの案を入れるとリズムが立つ。
私だったら思い浮かばないようなきりっとした〆になる。
この人のタラントはスペインでも屈指なのでそれは凄い。

ペドロとへスースがリズムの詰めを始めると、まるで火星語で話す二人だ。

ホセアンヘル・カルモーナのフラメンコ的美声に圧倒された。
物凄く上手い。
何ていうか、独特の錆がある。悲劇的な錆があって素晴らしい。
ペテネーラを歌うと、ソロコンパスのへスース・エレディアとはまったく違う悲壮感が漂う。切迫した何かがある。

ペドロのペテネーラは、あれ?て感じだ。

ホセマヌエル・ロルダンのずしーーーーんとしたペテネーラを頭に叩き込んでしまっている私には、全然違う展開に驚く。
水のようにさらさらと流れるペテネーラでああいう湿った陰鬱な暗い悲壮感がない。

うーーーん....
二言三言言ったけど一蹴された。
ま、いいか...こういうのも有りかな。

かくして自分の意図したのとまてもや違う展開になる。

だからフラメンコって生ものなのよねぇ...

Bのペテネーラのプログラム、おそらく中身の発表は1/5になる。

Åプログラム、中々いい展開だ。圧巻が三人のブレリアだし
へスースの極めつけのシギリージャだし、もしかしてフランシスの美しいフアルーカが期待できる これもいいプログラムだと思う。

さ、稽古に行こう。衣装が出来てきて着ると女前が10倍に上がる。別人みたいになりますよーーーご期待ください



●2005年12月14日(水)

フランシスとシギリージャの仕上げ

今朝はラジオが寒波だと言っていた。

車を運転しながら、ふむふむと聞くと、なんと30年ぶりの寒さなのだそうだ。
さすがにスペインに来て以来初めての寒い朝ということになる。

車外に立つと、家に帰りたくなる寒さだった。

フランシーのスタジオの前で
あーーあ、とため息が出るくらい。

約束の20分前にもう来ている。
やぁ、とドアを開けてくれると、帰るのはやっぱり止めたという気になれた。

黒い髪にしては 不自然なくらいに碧い目が、何となく
私の気持ちに碧い色を投げかけるのだ。
碧色に染まって、真面目に稽古に入る。

長身で鋭いへスース・アギレーラとは対照的に
ナイーブでしっとりとした情感の踊り手だ。
シギリージャの二つ目の歌とエスコビージャがあっという間に振付け終わる。
頭から通してみると結構ずっしりした手ごたえがある。
まぁいいかな?こんな線で。
結構満足だ。

時間通りにへスースが寄ってくれる。
二人は初顔合わせなのだ。
いつも稽古着のシャツ姿ばかりだったのが
紹介するからと言うコンセプトだと、まぁびっくりするような
りゅうとした格好で颯爽と現れた。
「フェロモン系」と誰かが言っていたのはこれかぁ、と合点。

ベージュの皮のロングコートに同じカーフのブーツ。
腕にしている時計の文字盤まで同系で凝ってる。
ものすごくエレガントで、言葉もなくしかけた位だ。
やっぱり共演の対抗男性というのを意識したのかしらん...
なんとなく面白くなってしまう今朝の私でした。

フランシーと私はとても気が合うのだけれど、
へスースともいい友達という感じで、仕事がとてもしやすい。

午後はペドロ・シェラが家までペテネーラの音楽を持って来てくれるという。フアルセータ部分を一分作曲したからCDに落としてあげたよ、と言うのだ。
この一分のために高速飛ばして持って来てくれるところが親切。

ちょうど仮縫いに出かけてしまうかもしれないと言うとボストに入れておくよ、と言う。

明後日どうせみんなで会って合わせ稽古するのに
一日でも早く曲が欲しいという私の要求に
ちゃんと応えてくれるのだ。

日本だったらこういう贅沢はきっとできないのだろうな。

明日はペテネーラとタラントを猛烈に踊りこまないといけない。
何故なら木曜はみんなに尊敬される踊りができていないといけないからだ。

なかなかやるじゃないか、と思ってもらえないといけない。
これが中々苦しい。寒波を吹き飛ばしてがんばらなくっちゃ。




●2005年12月08日(木)

へスース・アギレーラ

昨日はへスースとタラントを振付ける。
先週、一回で半分できてしまったので二回目のエスコビージャが私の宿題として残っていた。

へスースの足は四次元だから一コンパスごとにつまづいたりすると間に合わない危惧があったのでー勿論私の方にねー
エスコビージャは私が作ることにしたのだ。

前の晩に苦しむ。
二人分の絵を描きながら一人で作るのは結構苦しい。
下絵だけで寝てしまって、朝早くから又工夫する。

彼の到着五分前にやっと作る。

案外気に入ってくれたみたいでほっとしたけれど
細かく体の方向を聞かれると、さっき作ったばかりだから
すぐに教えられない。
冷や汗ものだ。
今さっき作ったばかりなのよ、と言うと少し感心してくれた。

するすると出来て、終わってしまった。
おお、二回会っただけで一曲完成ね、凄いなぁ...

♪220位の所で彼は凝る。
ここでこうやろう、と言われると来週までにやる、と返事するしかない。
何ていっても、追い上げた後の速さでなんかやるのだ。

「コントラで三回転してない?」
「うん、そうだね、コントラだね。アティエンポでも平気だよ」
やってごらんよと言われてやるとコントラになってアティエンポができない。
なんだ、できるじゃん、て事になる。

まぐれだったらどうするぅーーーーとは言わないでしっかり自分の中で踊り込みが宿題になる。

タラント完成。後はギターと歌が来て全く違うものになるか
コンバスの伸び縮みで磨きかけ。

宿題のマッハコンパス抱えたまま
明日はフランシスと残りのシギリージャ。

今日は夜遅くまで寝れない。

タマーラが父親と1000キロを移動中。
夕方にパンプローナから凱旋予定。

スペイン選手権で八位に食い込めたそう。

スペイン全土に何万人って選手がいるのだから
メダルはもらえなくても大したお手柄なのだ。

ノエリア一日中二部セッションに渡って今日は訓練。
終わりが夜の11:00という。

公演がなくても
家族に煽られて私は舞踊に生きるんだろうな、と
今日はしみじみ思う。

祝日だって言うのに家族がこんなに鍛えて振り絞っているのに
一人でちんたら遊ぼうとは思えないものね。

母親は非行に走らないで真面目にお稽古。

●2005年12月06日(火)


祝日というのに朝も早くからフランシスの稽古場に向かう。

黒髪なのに青い目が何となく、いつ見ても不思議な雰囲気をかもす人だ。
古代ローマの戦士の格好をしたら本物だと思うかもしれない...なんて挨拶の後で想像したりする。

シギリージャを二回目のエスコビージャまで一気に振付ける。
歌振りの所で二人の解釈が少し違ったりする。

僕は女性を優しく労わりたいんだよ、と言う。
激しく振り向かせる、と私は決めてかかっていたから
あら?そういうのも有りか....と沈思。

ここでは僕に恋してる女なの?それとも何?
聞かれて少し当惑。
「決めかねて混乱している女なの」
「あ、そう!決めかねてる、ね」

又ぺテネーラスの解釈で、帰り道からもう12時間も悩んでいる。

誘惑して翻弄する女なのか、
そういうつもりではないのに、争いの焦点になってしまう女なのかがどうしてもはっきりしない。

ここははっきりさせないといけない。
振り付けが曖昧になる。

ずうっと混乱したままの女というのは、案外真実かも知れないな
なんて考えたりする。

内気な人はいつでも内気ばかりかというと
そうじゃないように、ぺテネーラスは消極的だったり
大胆だったりするのだ。
炎のようになる傍から、男性の思いがけない強い情熱に
驚くのかも知れない。

教会の鐘の音が
誰を弔うためかとお前に知らせる必要は無い

お前は知るだろう、
後悔と言う名前の知らせによって

確かに歌詞はこう結んでいる。

後悔するだろうと言うのだ。

火種は自分にあったかも知れないけれど
相手の情熱の行方を食い止めることが出来なかった女なのだ。

後悔する...つまりここがカルメン的な女性像との違いなのじゃないかしら...

ああ、疲れた。一応の解釈をしてもう寝よう。

●2005年12月05日(月)

下の娘がスペイン北部、ほとんどあのテロリストのアジトとして有名なパイス・バスコに行っている。今朝、ソロコンパスのDVD撮影を終えた父親が1000キロも運転して遅ればせの観戦に飛んでいった。

上の水泳娘は昨日大会だったが、なんと失格になったそうだ。

背泳で始めのうねうねをー泳がないで魚みたいにうねうねするー16メートルも息継ぎ無しでやってしまい、二掻きで25メートルの壁についてしまったらしい。肺活量が並でないので、うっかりしてこんなに行ってしまって失格になったと言う。
夜の11:00に疲労を滲ませて悔しがる。
観客席から野次られて、打ちのめされたらしい。

私は、一昨日ホセ・ガルバンと話していて結構、ショックだった。

ホセがここ数年のフラメンコなんか好きではないと言う。

「昨日、イサベル・バジョンを見たけれど、何着て出てきたと思う?」
「イブニングドレスだよ。フラメンコ踊るのに。なんと長手袋までしてたんだよ、リタ・ヘイワースみたいな。カンタオールが出てきて歌わなかったら、何を見せられてんのかわかんなかったくらいさ」苦りきる。

最近は本当にうすっぺらのドレスで踊る人が多い。

もう、クロスオーバーとか、はしゃいでいる場合ではないと思う。
こんなに行き過ぎではきっとあと数年で逆戻り、回顧、ルネッサンスになるんだろうなと思う。

衣装屋が言う。
もう、端切れだか雑巾だかわかんない物着て出てくる。
びつちびちにタイトで足も上がらないような。全く何考えてんだか....

批判の割には、
「ねぇ、もう衣装これ以上発注するのやめてくれない?
なんか今風にしゃれたブティックの物かなんかでも着てよ」

そんなぁ...!

めちゃくちゃな一日は、苦しみのタラント振り付けで終わる...


●2005年12月03日(土)

マノーロのべテネーラス

今日は思いがけずにあの素晴らしいカンタオールのマノーロ・セビージャと会った。

明日、ソロコンパス・シリーズのDVD撮影があるので
リハーサルに来ていた。
ギタリストのラファエルも、ソロコンパスのスーパーラピドなどでおなじみだ。

ちょうどぺテネーラスに手を入れて、もう10回くらい変えているけれど、多分最終に近いデッサン完成になったばかりだ。

「10分だけやってくれない?通してみたいのだけどいいかしら?」
図々しく、撮影リハに来ていた踊り手を廊下に追い出して割り込む。
「うん、いいよ」と気安く引き受けてくれる。
傍で撮影リハなのに、とホセ・ガルバンがやきもきしている。
じいっと心配されて見ていられると嫌だから
ビデオカメラを持たせて録音係にしてしまった。
歌い手にキューも出してね。
男三人を従わせて、私は魔性のぺテネーラを地で行く(笑)
踊り込みの狂気の中ではなんだってやってしまう。

昨日までこの曲をいじっていて
もう本当にヒステリーみたいに不幸になっていたのだけれど、
始めから通して見るとそんなに悪くなくて、少し生きた心地が戻った。

マノーロ・セビージャみたいな、もう70歳に近いというベテランは、本当にこういうものが上手い。

昔、この人とタブラオで一緒だった時期を思い出す。

とってもハンサムで洒脱な人だった。
プロ中のプロで、それは踊り歌には造詣が深い。
本当に毎晩、出番が楽しみだった。

ちょうどあの頃にクリスティーナ・オヨスが見に来て、マノーロをガデスの舞踊団に連れて行ったのだ。

マノーロはあの映画カルメンでもひょうきんな役で出ているし
フェンテ・オベフーナでも素晴らしい歌唱力を示した。

この人の前身が踊り手というのは、あまり知る人がいない。

ラファエルのギターとマノーロの歌で一曲通して
ビデオに納めたから、これから欠点を洗い出して研究する。

本当に難しい曲だ。あまり動いちゃいけないというのが又大変だ。動く時は確実に意味がある動きだけしかしてはいけない。
重く重く踊る。

お陰で朝にこれを稽古すると一日脱力してしまう。
まだまだ辛いタラントが週末、月曜はフランシスとシギリージャの振り付けに入る。
本当になんてこった!!て言う毎日だ。

下の娘がスペイン選手権を戦いにさっき旅立って行った。
パンプローナというスペイン北部だ。

行ってやれなくてかわいそうだ....

さ、稽古しよう。

●2005年12月01日(木)

タラント

予定のダニエル・ナバーロがアムステルダムの巡業中に音信不通になって久しい。
もう飛行機の切符がウエイティングになってしまうというので、ずっと彼に心を残したまま舞台に穴はあけれないから
この人は諦めて
別の相手役のオーディションに入った。

今回は、素晴らしい男性舞踊手を二人連れて行こうと決めていたので変更無しだ。

ぞくぞくと芸歴プロフィールが寄せられたけれど、ペドロがどうしてもこの男がいい!と叫ぶので、名前は聞いていたけれど一度も舞台を見ていない人に決めてしまった。

プロの間の評判はすこぶる良い。

ダニエルには契約書の送付のしようがなかったので、男性舞踊手の契約書だけがサイン無しで残っていた。
書き換えて一昨日、別の名前にして契約完了。

評判のバイラオールは、会ってみると、すこぶるつきに感じが良かった。
物凄く上手いという話だけれど、性格が篤実そうで嬉しくなった。

相手はうちの夫を良く知っているそうで
「彼の奥さんなのか!!じゃ、決まりだ!何の心配もないね」と大喜びする。
いつ振り付けに入る?いつ?
たじたじたじ....

もう今回は七曲も踊るから
本当にあっちで振り付け、こっちで振り付けで
目が回りそうなのだ。

朝早くてもいいよ、二時間半くらいはやろうね
(げっ!)

今朝、彼とタラントの振り付けに入ってあっという間に曲半分終わったけれど、期待を裏切らない四次元のコンパス感だった。

ん、もう....すっごい強さで
すっごい速さで、すっごい感覚なのだ。

帰ってくれる時など少し嬉しくなったくらいだ。

門までも送らずに、そのまま復習。
お互いに振りを出し合ったのだけれど、あっちに案を出された分は、相当きつい宿題になる。

鍛えられるなぁ...

それもそのはず、初めて芸歴に目を通して見ると

アレグリアス発祥のカデイスで、アレグリアスの最高踊り手賞を受賞している。

コルドバのコンクールではシギリージャで受賞している。
タラント発祥の地でも、タラントで受賞している。
クリスティーナ・オヨスの舞踊団には七年くらいいたみたいだ。
道理で振りの覚えが早い...


この素晴らしい、一級の、ちらしに写真も名前も出ていなかった
私の共演者の名は

へスース・アギレーラです。
皆さん、お楽しみに。私は苦しみの最中であります
明日も九時半からスタートですーお忘れなく、スペインの九時半は日本の七時半の威力ですー

ああーーー足が痛くてじんじんするぅ

http://www.flamencoole.com/

フラメンコ・オーレ!〜スペイン発フラメンコ情報サイト〜 メール


WebDiary CGI-LAND