このバレエ史を語る上で決して脇役にできない筈の人物についてはほとんど何もわかっていないらしい。彼自身の残したほんの僅かな記録があるだけで、半世紀近くほとんど生涯を共にしたはずのプティパはこの高弟について言及したものを残していないし、当時の関係者の書簡にも出て来ない。このことからプテイパとイワーノフの人間関係がどんなものだったのか色々と憶測が飛ぶ。その上にイワーノフは内気な人物であったとも想像されている。

1834年モスクワに生まれ、後マリインスキー劇場付属舞踊学校に入学した。卒業後、同劇場バレエ団に入り、活躍。第一舞踊手だったプティパが舞台を引いてバレエ・マスターに就任すると、その後継として第一舞踊手となった。この後に彼もプテイパの下で第二バレエ・マスターとして振り付けに才能を表して今日なお残る名作の数々に関与している。しかし、前述のように人物についての確たる記録が残されていないのと、プティパの名声に隠れてしまい、彼の作品や振り付けまでもが明瞭に記録されていない。

くるみ割の振り付けでは、この台本には欠陥が多く、相当苦労した事が知られている。それにも関わらずくるみ割が作品として評価される各国の踊りなどでイワーノフは天才的なひらめきと魅力に満ちた振り付けを残した。

他にほぼ確実に彼の偉業として知られているのは、「白鳥の湖」第１幕第２場のあの素晴らしく美しい振り付けであると言われている。