スペイン発不定期便〜友繁晶子フラメンコ・バレエ・アカデミー
スペイン発不定期便
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スペイン発不定期便
― 気の向くままにちょっとエアポケット ―
第1回
日本から帰ってたったの2日目。 ボーっとしていると バレエの仲間のエバからTEL。 現代舞踊の何とかという 有名舞踊団のオーディションがあるから 行こうと言う。 「えー!?私も?」 「当たり前じゃないの。 何のためにえんえんと バレエレッスンしているのよ!!」 …… バレエは専門外なんだけどなぁ…
あっという間に押し切られて バカのように出向いてしまった。 オーディション会場に…。
おー! すごい! フラメンコのセビージャにこんなにいたか! プロのバレエダンサーが!?
後で知ったところでは、 なんとこの日 200人近いダンサーが応募したという。
へえー! いつもはいったいどこに隠れているのかしら? と思ったのは私ばかりではない。 一番驚いたのは当の応募者達らしい。 まさかこんなに居るとは思わなかったろう。
落ち着いて見回してみると、 私が習ったことのある先生達まで来ている。
フランスやイギリスの舞踊団に在籍していた 生え抜きだって何人も混じっている。
肩から首の線に プロ中のプロという年季が 一目で見てとれる。 こういうダンサー達というのは、 どんなにリラックスしている時でも 姿勢が崩れないのだ。
厳しいレッスンで鍛え抜かれた、 あの強靱にしてエレガントな立ち姿には
いつも私はほれぼれする。
私もバレエレッスンが詰まっている時期には、 日常の中でもスクッと あの姿勢が板についているのだけれど、 公演なんかでフラメンコの方にトリップしちゃうと
一カ月で違う姿勢になってしまう。
今年の夏も 秋葉原のスタジオオープンもあったりして 二カ月も日本に行っていたので
バレエの「スクッ」 なんて影も形もなくなってしまった。
あー そうなのです。 堕落するのに努力は要らぬってね。
すぐにダメになっちゃうもの。 何もかも…。 取り戻すのに二倍の根性が必要。
よほど生真面目な性格でないとやっていけない。
フラメンコの大変さなんて言うまでもないが、 バレエの几帳面さというのは
すごいものだ。
だから私は一定のレベルに行っている バレエダンサーには たとえどんなに魅力がなくても、 まず、その努力と忍耐に 心から敬意を表するのだ。
そのくらい容易ではない。
…で、オーディション。 「何て言われようとやらないものね。」
テコでも動かぬ気構えで力んでいると、 あんなに押しまくったエバは 当日になったら気もそぞろ、 私のことなんて別にどうでもよし、 かまっちゃいられない。
おー!よかった! 手なんかグイグイ引っ張って行かれたら どうしようかと思った。
それにだいたい すごい緊張感が みなぎっているのだもの。
ある意味ではオーディションて 舞台以上の息苦しさ。
部外者の気安さでじっくり観察してみると、 バレエの人達って、 あっけらかんのフラメンコとちがって 感情を内に包み込むようなのだ。
そう、互いに相当のライバル意識をもやしつつ 静かに火花を散らしているのが
ちょっとショックで見物だった。 エレガントにして筋金入りの火花…。
私の愛する友、エバは、 クラシックは相当なものだが モダンはやった事もない。
だからもちろん初めからチャレンジしてみたい! というだけで来ていたのだけど
なかなか奮闘していた。 モダンってアラベスクやピルエットも崩して 難しいスタイルとフィニッシュを連発するから。
私もクラシックがもう少し何とかなったら やってみてもいいナと思った。
ともあれ、自分の専門じゃないことって楽しい。
先生が居て習っていられるうちって一番幸せ。
朝早くバレエレッスンで 一日が始まるのは 本当にうれしい。
明日からレッスンが始まる。 そのうちロイヤルバレエ団の 集中講座にだって出ちゃうかも! ク・ク・ク… しわくちゃの顔と 耳まで届く脚を目指そう!!
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