スペイン発不定期便〜友繁晶子フラメンコ・バレエ・アカデミー
スペイン発不定期便
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スペイン発不定期便
― 気の向くままにちょっとエアポケット ―
第11回
「スペインと日本の狭間 まじめにお仕事」の巻
来週からセマナ・サンタだから、 どこに出かけても人だらけだ。
車もやたらと渋滞して 思い通りに仕事が運ばない。
セマナ・サンタが聖週間、 キリスト復活の一大宗教行事だと
いうことぐらい ご存知の方は多いと思う。
だが、24時間×7日間だ。
夜通しキリストとマリアの山車(だし)を担ぎまわる。
それをタイムテーブル片手に人々が見物する。
見物するのに、皆で、張羅を着込んで、 大いにめかしこんで 街に繰り出すところがちょっと違う。
学校が1週間休みになる。
フラメンコだって踊っちゃいけないのだ。
それと知らずに舞踊留学をこの時期に合わせて来て、 泣きべそをかく子が毎年後を絶たない。
キリストが磔り付けになった聖木曜日は、 絶対に家でもレッスンしてはいけない。
喪に服すのだ。 これだけはよく覚えていないといけない。
少なくとも、 この時期にスペインに来る人は…。
銀行や何もかもが時間短縮になるし、 店も結構閉まっているところが多くなり、
旅行者は換金や買い物が思い通りにならずに 困ることがある。
さすがスペインだ!と感心するしか術がない。
これでもまだ序の口だ。
この後、すぐに春祭り、有名なフェリアがまた1週間、 昼夜をたがわずに始まるのだ。
24時間×7日間だ。
体力が違うんだなぁ、 と感心する機会にまたも恵まれる。
体力どころか、日本人の精神構造では、 こんなに長いお祭りはとてもじゃないが楽しめない。
この国に長い私のような人間でさえ、 毎年うんざりしてしまうくらいだ。
仕事が停滞するだけでなく、 書類なんかもなくなったりして、
前後2ヶ月くらいは 全てがめちゃめちゃになる。
この国に住むというのは、 日本とはまた別の意味で根性が要る。
去年の秋から、セビージャの新スタジオの設計に取り組んでいる。
現在、街中に練習スタジオが1つと、 郊外にリハーサルスタジオが1つある。
今度のは、カントリークラブの敷地内に出来る。
ゴルフのフル・コース、ジム、プール、 エアロビック・スタジオ、乗馬が、
好きなだけやれるかなりの設備の他に、 目玉は、休日もやっている保育園があることだ。
小さい子供を持つ母親が、 思いきりスポーツに専念できるように配慮されていて、
赤ちゃんでも預かってくれるのだ。
子供のためのレスト・ハウスも完備しているのに 費用はとても安い。
セビージャを望む、丘の上に広がる、 このカントリークラブは、
それでも市街からバスで15分で着く。
子供を産もうかどうしようか、と悩んでいる生徒には、
さっさと決心して、 産後すぐに赤ちゃんごと スペイン留学してしまう方が、
日本で身動きできずにイライラしているより 手っ取り早いと勧めるつもりだ。
…で、この敷地内に フラメンコスタジオの設計をお願いしているが、
もう5ヶ月もミーティングしているのに 一向に終わらない。
担当の建築家がやたらと張り切って、 私の意見なんか聞き入れないのだ。
照明は蛍光灯でいいといっているのに、 まさか!と驚いて譲らない。
なんだか六角形の星形になってしまうし、 床だって、コンパネでいいって言うのに
天然素材の分厚いのを研究してくる。 もう埒が明かないのだ。
いいわよ、任せるから… でも総合見積が出たときに泣くのはそっちだからね!
出ないものは出ないんだから、 と言ってこのところ知らん顔している。
まぁ、よくて工事着工はこの夏だ。 それから一年後が完成だから、
集中生、常設クラス生、時差出産するようにね!
「これぞスペイン!」 だから友繁先生も歯が立たない。
仕方ないから自分の手に負えるところに、 このところ専念している。
前回の集中レッスンで、ブレリアや基本テクニカに、
初めて参加する人が、 ついてこれないみたいだった。
クラスの中にはうちの生徒でなくても、
もう、集中レッスンに 何回も参加している人もずいぶんいる。
つまり、そういう人達が上達してきたのだろう。
ここに初参加した人と、 舞踊歴や年数は全く同じなのに、 開きができてしまった。
私にとっては嬉しい現象だけれど、 呆然としている人達にはかわいそうな気がした。
(とはいえ、ショックを受けるというのは とてもいいことなのだ。
間違った練習方法を反省する機会は、 なるべく早くつかんだ方がいいに決まっている。)
ともあれ、ブレリアも、 今のブレリアを更に高度に磨いて、
スペインで踊った時に 人々が驚きあきれるくらいに
粋でいなせなコンパス感を養えるコースにしたいので、
従来のブレリア、足、上体のコースを 「上級U」とした。
その下のレベルを今回作って 「初、中級」の名称をつけて区別した。
焦らず、落ち込まずに、 ゆっくり体得できるようなクラスを作ってあげたい。
セビジャーナスが終わる頃から、 もう入った方がいいようなコースだ。
粋とかアイレは、 まだ拙い頃から ダイレクトに入った方が 早く身につくからだ。
これで、私の集中レッスンのコースもレベルが分かれて、 ずいぶん親切になったと思う。
あとは,自分がどっちに入るか各自が決めるだけだ。
人それぞれだから、 苦しくっても,ちょっと上のクラスのほうが、
やりがいのある人もいるし、 きつめのクラスだと気負けしてしまう人もいるものだ。
レベルが出そろったところで、
6月の集中レッスンは うんと活気のあるものにしたいな、と
楽しみにしている。
なんといっても、 人が育ってくれるのは本当に嬉しい。
スペイン留学なしで、 ちょろっと行った人とは 比べようもないくらいの実力を
備えつつあるのは、 見ていて気持ちがいい。
みんな、会社ではきつい仕事を抱えているし、 家庭の事情も様々だ。
それでもいいかげんなおざなりではない、 フラメンコをめざしているんだもの、
私は全力で応援してあげないとウソだ。
今回は、バルセローナで仕事を片づけて、 ほとんどそのまま日本に直行する事になる。
出発する空港も年中違うの!本当に不定期便…。
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